ただの ページ24
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「……別に隠さなくとも」
「いやいや本当に」
「…………俺は口は硬」
「だから違うって」
私の度重なる否定に、「嘘……だろ?」みたいな顔で動揺している虎杖弟。なんだコイツ、ちょっと可愛いな。
「あんなに懐いているのにか?」
「懐……うん、まあ、仲はいいけど」
「いつも好きだの可愛いだの言ってるじゃないか」
「いや恋愛的に好きだったら逆に言わないよそんなこと。
ただの友達だって。」
友達。去年からクラスが同じで、隣の席になってから仲良くなった友達。
詰まらない国語の時間に、ボソッと呟いたくだらない私のギャグに唯一笑ってくれたのが悠仁だった。
互いの元々の性格もあって距離は近いが、本当にただの───……いや、ただの友達と言い切るには些か語弊がある、けれど。
兎に角。
私達の関係を称するに相応しい言葉を、私はこれ以外に知らない。だから、深くは考えなくていい。
「てか、あんたもそういうの気にするんだね。」
「……。」
「……何?どした?」
私の返事を聞いて、彼は何かを考え込むようにボーッと一点を見つめていた。
声をかけれど、その視線が揺れることはなくて。
「……いや、」
小さく、呟いてから。
「───……そう、か。」
「ッ、……」
一瞬。本当に一瞬、心做しか虎杖弟の表情が柔らかくなったような気がした。
「というかお前、その呼び方はどうにかならんのか。」
「呼び方?……あぁ、虎杖弟?」
「兄の方が本体みたいな呼ばれ方は気に食わん」
「気に食わんって言われても……他になんて呼べば」
「名前でいいだろう」
「えっ」
驚きの声を漏らす私に、ハテナを浮かべながら首を傾げる虎杖弟。
「……呼んでいいの?」
「……?あぁ。」
「罠じゃない?呼んだ瞬間殴ったりしない?」
「だからお前は俺をなんだと」
───……笑っ、た。
今、微かに彼の口元が緩んだのを、私は見て。
「……じゃあ、私も名前で呼んでね」
「……気が向いたらな」
「じゃあ虎杖弟のままにする。」
「ちっ、……分かった、呼ぶからやめろ。」
あ、いつもの表情に戻っちゃった。
……でも、まあ。これもこれで、悪くはないか。
「ふふ、改めてよろしくね、宿儺。」
「あぁ。」
ぶっきらぼうな返事の奥、宿儺の口元が再度緩んだのは言わないであげようか。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時