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22. ページ24

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途端、男は世界が急速に色褪せていくのを目にしました。



この世界に存在する全てが偽りのように思えたのです。

女が綺麗だと笑っていた桜の木も、好きだと言っていた初夏の香りも何一つ男の心には届かなかったのです。


蛙のように醜く地べたを這い蹲る村人は言います。






「先日、村で干ばつが起こりました。」


「おまけに酷く大きな地震もやって参りました。」


「あの女のせいなのです。」






そう口走った村人の目は、男が見てきた何者よりも、汚く濁っていました。






「あの女は生まれた時から災いをもたらす存在でした。」


「あの女が全て悪いのです。」


「貴方様もあの女を食べなかったということは、気に入らなかったのでしょう。直ぐに、次の女を、」






村人が全てを言い終えるより先、辺りには血飛沫が飛んで村人の頭はごとりとその場に落ちました。


男が村人を殺したのです。


もう何を考えることも出来なくなった男は、目に映った人間を次から次へ手にかけます。

隣の家の夫婦も、更に隣の家の老人も。道行く子供たちも全てを殺しました。





途中、人間の目に映った血だらけの己の姿は、呪われた己に何よりも相応しいと男は思いました。






───女の遺体を抱きながら、震えた足取りで男は家へ帰りました。


酷く冷たい肉の塊でした。


男が起きろと声をかけど、もう何を返すこともしませんでした。

鈴を転がしたような笑い声も何も聞こえません。


女は永久に静かなままでした。






「……殺そう。」





男の声が、女の胸に落ちました。





「お前を呪った人間も、



罪のないお前を救おうとしなかった人間も、



お前が死んでも素知らぬ顔で生き続ける人間も全て、


俺の手で殺そう。」







女を殺したのは、人間でした。

村人のお門違いな呪いが、彼女の命を奪ったのです。

何の罪もない、誰よりも汚れなき心の持ち主の少女を、殺してしまったのです。






その晩、冷たくなった女の亡骸を、男はずっと抱き締めて離しませんでした。



男は、生まれて初めて泣いたのです。



そして、その涙が尽きた頃。

男は人間を辞めました。

そうして永久に、人間に戻ることはありませんでした。



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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