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23. ページ25

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空白に触れてしまったようなその一瞬でさえ堪らなく美しかった。




まるでこれ迄の年月を一つずつ掬い上げて埋めるように、宿儺は淡々と御伽噺のような地に足つかないその話を語って聞かせてくれた。

あんまりにも彼の声が心地よく耳を撫でるものだから、存在しない記憶の中、顔も知らぬ母親に童話を語って聞かされたような一種の錯覚にさえ陥って。




自然と言葉を終えたあとは、何を言うでもなかった。

ただ、二人の呼吸だけが確かで。






「その人、……は」





意外にも、声は震えずに言葉になってくれる。





「その人は、どうなったんですか?」




私の問いかけに、宿儺はじっとその瞳を光らせて。

とうに彼の中で返事は出ているはずなのに、すぐにはくれてやらず、喉の奥を徐に揺らしながら言葉を温めているようだった。






「さあな。」




全てを話した宿儺は、本当に現世に存在する血の通った人間のような表情をしていた。

淡々と紡がれる言葉の端々に彼の色が見え隠れしていて、隠しきれずに震えた声が、私の心まで伝わって仕方ない。





「ねぇ、宿儺さん。」




これは、希望的観測だ。

私は今、目の前のこの男に。本来憎むべき存在のこの男に、希望を抱いてしまっている。





「その人って、もしかして、」




終ぞ、最後の言葉が喉から出てくることは無かった。

ぐらり、ぐらり、世界が揺れている。

睡魔とも形容しがたい何かが、私を地の底に引きずり降ろさんと引力を及ぼして。





視界が霞む。

彼の輪郭がぼやける。

私たちの境界線が、濃ゆくなっていく。





「────時間切れだ、小娘。」





駄目だ、駄目。

目を閉じてはいけない。今この人を離したら、もう二度と会えないようなそんな気がして仕方ない。



私は知らなければならなかった。

何かは分からない。

ただ知るべきことがあることだけが確かだった。




やけに痛ましい表情の宿儺だとか、この先を知ってしまうことへの本能的な恐怖だとか。



手を伸ばした。

傾いていく世界に。遠のいていく貴方に。





「…………もう二度と、ここへは来るなよ。」





その言葉を合図に、世界から音が消える。

私はもう、ここに居られない。





「───」




最後。瞼が閉じきる数瞬前。

宿儺の口元が、何かを綴ったのを、私は確かに、見て。




ねぇ、今。もしかして。



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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