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10. ページ12

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私よりも幾らか大きな体の宿儺が一歩、こちらへ歩みよる。
伸びた腕に恐怖を覚えて目を瞑りながら仰け反れば、想像より遥かに小さな痛みがおでこに走った。





「───怯えすぎだ、馬鹿者め。」





そう言って宿儺が薄く笑った。

……笑った?いや、というより今こいつ“デコピン”したか……??





「おい、何をしている。」


「ちょっと待っててください尊さを噛み締めているので。」


「は?」


「はいすみません黙ります。」





天を仰いでギャップを噛み締め数秒。宿儺の威圧の籠った一音により呆気なく終了。

はあ、と溜め息が聞こえて顔をあげれば、やはり何処か不服そうな宿儺の顔が伺える。

彼は今度は山の中腹あたりで腰を下ろすと、半分ほどに開いた気だるそうな眼で私も座るように促した。彼より数段下の場所に。

一応座る位置の上下は気にするのね。






「お前、何故呪術師なんぞしておる。」





グラグラと不安定な足場にやっとこさ座れたかと思った矢先、飛んできたのはそんな質問。





「何故……?」




宿儺と普通に話をしているこの現状も可笑しいのに、果てには宿儺の方から質問をしてくるのだから私は困ってしまう。

彼の問いかけを意味もなく繰り返して沈黙。「早くしろ」と、やっぱり変なところで俺様を見せつけてくるからよく分からない。





「何故って別に、そういう体質に恵まれているから……ですかね。」


「だからと言って命を懸ける理由にはならんだろう。」


「えー……まあ、確かに。」





意外にも、押し負けてしまったのは私の方だった。

今思えばこれと言って理由なんてなかった。ただ呪霊が見える体質だったから。ただ人より少しだけ呪術を扱えたから。




「……あ、」




零れた声。宿儺が何事かと首を傾げる。




「不純っちゃ不純ですけど、お金の為ですかね。」


「はぁ?」




見るからに呆れてますと言わんばかりの宿儺の顔。

いや、呪いの貴方が言えた義理じゃないでしょう。





「小さい時から親がいないんです。施設で育ったんですけど、18歳になったら独り立ちしなくちゃ行けなくて。」




その点、高専はいい。

寮を与えられるだけでなく、生徒にまで給与を支払ってくれるのだから。





「生きるためだと思えば、命を懸けるのも相応の対価じゃないですかね。」




自分でも、呪い相手に何を言っているのだろうかと思った。

宿儺は何を問うでもなく、ただ静かだった。


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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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