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あれから僅か数日。トントン拍子に進む話に私さえも大丈夫かと思ってしまったが、あの五条先生とかいう人が色々と手を回してくれたらしい。
母は元より気弱な私を心配していたから、初めて私が自分からしたいと言ったことを否定したりなんてしなかった。
何も聞かれなかった辺り、大方気弱な私が虐められて転校したがってると思われたのだろうか。それは少し、複雑だけど。
「んでここが共同スペースね。就寝時間はあるにはあるけど、まあ基本先生居ないから自由だな。」
必要最低限の荷物を詰めたキャリーを転がしながら、校内の説明をしてくれる虎杖君の後ろを歩く。
ちなみに今は触ってない。五条先生曰く「高専内は余程のことが無い限り呪霊は居ないから大丈夫」だそうで、
「ひっ、」
「おっと、大丈夫か?」
……呪霊は、居ないらしいけどね。
恐らく五条先生が指す“呪霊”という言葉は、前に虎杖君に助けてもらった時のああいうやつを言うんだろう。
今みたいに私の前に突然とび出てきては驚かせるお化け達はまた違う類。害がないから怖くない、という訳でもないのだ。
「うん、大丈夫……いないと思って気抜いてた」
「腕、掴んでもいいよ?」
「いいよいいよ、歩き辛いでしょ。」
この数日で分かったこと。虎杖君は心配になるくらいのお人好しだ。
あの日、突然「ずっと傍にいてください」なんて言い出した私を気持ち悪がることもせず、ただ涙ながらに語る私を優しく慰めてくれて。
それどころか私以外にもそういうものが見える人達のことを教えてくれ、今こうやって高専にまでお世話になっている。
本当に、なんて優しいんだろうか。
「別に気にしねぇって、ほら」
「わっ!」
ぐい、と手を引かれたかと思えば、身構えていなかった私は呆気なく彼の腕の中に収まってしまう。
……腕の、中?
「……わりっ、ちょっと加減ミスった」
触れればいいだけなのだから、何も抱きつく必要は無い。
やっぱり虎杖君も男の子だから、こうやってベタベタされるのは嫌だろうし。
その思いで離れようと体制を変えれば、再び彼の大きな手が私の手を掴む。
「ほら、手。これならいいでしょ?」
「……う、うん」
ニコニコと笑う虎杖君。
別に、触れてるだけでいいのに。手を繋ぐ必要は無いのに。
私はどう考えれば「これならいい」になるのか、全くもって理解が出来なかった。
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ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時