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完全に語弊を招く発言をしてから数秒。
凍りついた空気をどうにかすべく私は弁明した。
こんな体質、誰も信じてくれるはずがないと黙り込んできた人生だったから、それを改めて口にするのは少しだけ、難しくて。
辿たどしく言葉を繋ぐ私を、誰一人急かさず、止めず、そして最後には優しく受け入れてくれたらしく。
「───つまり悠仁に触れている間は、呪霊が見えない訳か。」
「そう、言うことです。」
その言葉を聞いた皆さんは、各々何を思ったのか小さく頷いた。
さっきまで不機嫌そうだった女の子も、それなら仕方が無いと言わんばかりにその苛立ちを消して。
「可笑しいな。低級呪霊でも、そんな腐る程は居ないはずだけど。」
恐らく虎杖君達の先生であろう男の人が、首を捻りながらそう言った。
呪霊。
聞きなれない言葉。所謂、私が心の中で呼んでいたお化けのことだろうか。
可笑しいと言われても、私には見えるのだから仕方がない。
そもそも今日虎杖君に会うまでは、あの化け物達に名前があることも知らなかったし、それを祓う専門の仕事。ましてや専門の高校があることなんて、私は露も知らなかった。
失礼、と呟きながら、目隠しの彼がずいと私に近寄った。
私の足先から頭のてっぺんまでを舐めるように視線を滑らせ──そもそも目隠しでどうやって見てるのかなんて疑問はあるけれど、聞ける訳もなく。
ほんの少し、間を持たせたかと思えば。
「あはっ、本当だ。君、愛されてるね。」
何が、と問うには及ばず、彼は「お化けに」とニコニコと笑いながらつけ加えた。
顔が引き攣る。笑い事じゃあ、ないんだけれど。
「ただ呪霊を引き寄せやすいのかと思えばそうじゃないね。
俗に言う……そうだな。
幽霊なんていう害のないものまで見えちゃってる。」
似通った二つの単語。私にはどう違うのかなんてよく分からないけれど、取り敢えず私の体質はあまり喜ばしいものでは無いみたい。
「良いじゃん。うちで飼おうか。」
「飼っ、!?」
「悠仁が拾ってきたって言ったからさ。ピッタリくっついてるあたり犬っぽいし。」
「五条先生、本気ですか。」
「僕はいつだって本気だよ。」
見兼ねた男子生徒が間に割って入っても、彼の勢いは止まらない。
がしりと肩を掴まれて、おそらく笑顔であろうそれがこちらに向けられる。
「──ようこそ、呪術高専へ。」
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ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時