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言おう言おうと息巻いていた言葉は、口にしてしまうと何とも呆気なく感じるものだ。
触れた体は、重ねた手は。
もうなんの役割も持たない。君を助ける方法でないと、俺は知っている。
「好きだよ。Aのことが、ずっと。」
───それでももう、我慢なんて出来ないから。
君を助けるのは俺じゃなくたっていい。
でも、君の傍にいるのは後にも先にも俺だけであって欲しい。
Aが好きだ。
それだけが確かだった。
この気持ちに蓋をすることが善だと言うのなら、俺は善良な人間じゃなくたって構わない。
好きなんだ。そんなこと考えられないくらいに。
Aが欲しい。今更手段なんて選べるわけがない。
十分、耐えたろう。
十分、苦しんだろう、俺は。
「虎、……杖君、」
Aの大きな両目から、ぽろぽろと雫が溢れては月明かりに照らされて何だか二次元的だ。
遠い未来、笑うAの隣にいるのは俺じゃない。
今この手を離してしまえば、きっと人生さえ交わらない。そしてそれはどこまでも正しい未来で。
俺がAを愛しても、Aが俺を愛しても、その幸せは永遠じゃない。
俺はAを残して行ってしまうし、その時こそ、君は、もう。
「……好きっ、だよ……、
私も…………私も、虎杖君が大好き」
喘ぎ喘ぎ紡がれた言葉は、俺がずっと欲しかったそれで。
笑う。何だ、Aも同じ気持ちだったんだって、今になって安心して。
「……俺は、ずっとAのそばにいられない。
でも……いや、だからこそ、限られた時間をAと過ごしたい。」
明日も明後日も、君の隣で笑いたい。
秋が果てて、冬が来て、春が巡っても俺はAの笑顔が見たい。
「…………私でっ、いいの?」
潤った瞳。
つけば崩れてしまいそうなその表情が、可愛くて、可愛くて。
「Aがいい。」
「私……っ、まだ、……虎杖君の傍にいてもいいの?」
「俺が傍にいてほしいんだって。」
そっと顔を寄せる。
鼻をくすぐる、Aの香り。
期待に満ちた瞳は、未だ不安の色がグラグラと揺れている。
それが可愛くて、愛しくて。
触れたくて、仕方なくて。静かに頬に手を添えた。
「──好きだよ、A。」
秋の訪れを感じさせる夜。
二人だけの夜。愛しい人の唇に、そっとキスをした、そんな夜だった。
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ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時