30. ページ32
.
素直じゃないなあ、と思う。
今目の前にいる彼女は勿論、彼女の頭を占領して止まない彼だって。
僕は何も意地悪のつもりでこんなことを言ってるんじゃない。
寧ろ悠仁に大切な人が出来たのならそれは素敵な事だし、何より僕は若者の青春を全力で応援したい質だからさ。
──難しいな、他人の色恋沙汰に関与するというのは。
Aと悠仁は本当によく似ている。
どちらも心配になるくらいお人好しで、自分のことなんて二の次で。
それでいて嘘をつくのがどうしよもなく下手だ。隠してるつもりなのか何なのかは知らないけれど、どちらも自分の気持ちに幾らか素直すぎる。
二人の互いを見つめる瞳を見れば、特別な感情を抱いていることくらい誰にだってわかるだろうに。
「そうだ、折角なら今から二人で報告しに行こうか?」
サプライズも兼ねてさ、と笑いかければ、Aは分かりやすく凝り固まった顔を見せた。
そうして言葉が見つからないままにかぶりを振って数秒。モゴモゴと動かした口から「自分で伝える」と振り絞るような声が静かに落ちたのだ。
……さあ、どうなるかな。
これ以上この場に居たくないのだろう。Aはそれだけ呟いて、逃げるように部屋へと帰っていった。
その後ろ姿を眺めながら息を吐く。重い、重いな。
Aはきっと、この事実を伝えればここに居場所が無くなるとでも思ってるのだろう。
馬鹿だな、本当に。
少なくともあの三人はそんな理由で友人を切り捨てるような奴らじゃないし、悠仁に至っては理由なんて後付けにしか過ぎないだろうに。
ねえA。
ずっと悠仁の傍に居たいと思うんなら、ちゃんと口にしなきゃ伝わらないよ。
優しい悠仁のことだから、拒むことなんてまずしない。それくらい君が一番わかって───……いや。違うな。
一番よく分かっているからこそ、出来ないんだ。
悠仁が情で自分の傍に居てくれると、きっとあの子は、そう思って。
果たして、僕のこのアシストはどう転ぶのだろうか。嘘をつくのが下手なAのことだ。素直に全てを話して、もし、このまま僕達の前から消えてしまったら───
…………。
…………いや、まあ、あれで良かったのか。
「……上手くやってくれよ、悠仁」
男なら、好きな子にあんな顔させちゃ駄目だろ。
君だって“時間が無い”んだからさ。後悔する前に、どうか早く、あの子を。
.
1265人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時