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ずっと自分を呪いながら生きてきた。だってそうでもしなきゃ、この不条理な境遇を前に自分が自分でいられなくなってしまいそうだったから。
視界を遮る数多の悪霊と、脳を揺さぶる呪霊の声。下を向いて、耳を塞いで生きてきた私が今、こうして前を向いて歩けているのは、紛れもない虎杖君のお陰で。
そして今、この体質に初めて、感謝をしている自分がいる。
────朝の5時。薄青色の空気が肌に染みて、眠たくもないのに瞼を閉じてしまうような、そんな朝だった。
ふと目を開けた先に居るのは、昨日散々に悲しい顔をさせてしまった虎杖君。すやすやと眠るその顔はいつもの彼と変わらない、いつもより幾らか幼く見えて、思わず笑みがこぼれた。
長い睫毛と、毛穴一つ見当たらない綺麗な肌。薄い唇と、髪色は馴染む桜色で。
昨夜、あの後。今まで我慢をしてきた分が一度に押し寄せてきたのか、私の背に回った虎杖君の手が緩むことは無かった。
どこにも行かないでと言った手前、私もどこに行く訳にもいかず。
泣いてるのか、何なのかよく分からない虎杖君の背中を擦りながら一緒に眠りについた。いつもは大きく見えたその背中も、彼が背負う物をいっぺんに知ってしまった私には、あまりに小さすぎるように思えてならなくて。
彼の苦しむ顔は何より見たくない。
私が彼の心の支えに少しでもなれたなら、それ程幸せなことは無いだろうに。
｢…………橘？｣
そろそろ起き上がろうかと、布団を剥いだその時だった。
パチリと開いた目。覗く琥珀色が擽ったい。
｢おはよう。｣
今日は休日。起きるには些か早いこの時間だが、やはりずっと彼の隣で眠るのも気が引けるもので。
挨拶をして数秒。返ってこない声を不思議に思いながらもベッドから足を出した瞬間だった。
｢ひゃっ｣
ぱし、と掴まれた手首。低い体温。起き抜けとは思えない力の強さに引かれて再び彼がいる布団の中へ引きずり込まれる。
｢行かないで｣
薄暗い室内。息のかかる程に近い距離が、強く掴まれたこの手が、幼子のような純真な瞳が、私を惹きつけて離さなくて。
未だ眠気を引き摺った細い瞳が、やけに大人びて見えてしまって仕方がない。
掠れて低くなった声も、ゆっくりと揺れ動く喉仏も、全部。
｢傍に居て｣
今、初めて知った。
起き抜けの虎杖君は、どうも心臓に悪すぎる。
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ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした！出来れば続編のパスワード教えて欲しいです！ (12月9日 2時) (
レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します！とても素敵な作品でした！続編のパスワード教えて欲しいです！ (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした！最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります！こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年1月30日 23時
