26. ページ28
.
虎杖君の口から発せられる言葉の殆どは、あの場を去る前に五条先生から教えてもらったそれと合致していた。
でもその端々に見え隠れする彼なりの考えや決意が、その震えた声に乗せられた感情が、私にはどうしても無視しきれなくて。
「───……橘を傷つけたくなかった。」
いつもは闊達な虎杖君が言葉に詰まる様子は何とも重々しい。
そうして繋ぎ止めるような言葉の最後は、私への優しさで締めくくられたのだ。
彼の中には呪いがいる。
そしてその呪いが私を殺そうとしている。
だから怖いのだと、虎杖君は語った。もし、万が一、考えたくもない最悪の事態が起こってしまった場合が怖いのだと、今にも泣き出しそうな声で。
「…………。」
教えて欲しいのだと垂れたのは私だと言うのに。
折角彼がその固い口を割ってくれても、私は気の利いた返事のひとつも出来やしなかった。
確かに見た、虎杖君の頬に浮かんだ邪悪な存在。
こんなにも優しくて、善良な彼に相応しくないあの呪いが彼の中に眠るのなら。
そうして今、彼をこんなにも苦しめている原因があの呪いなのだとしたら。
息を吸った。
「…………私ね、悲しかったんだ。」
話している途中に落ちてしまった虎杖君の視線が、僅かに動いた気がした。
「突然、虎杖君に避けられて悲しかった。」
「……。」
「何か悪いことしたのかなって。嫌われちゃったのかなって、不安だった。」
「…………違っ、」
弁明するべく彼が口を開いた。しかしその言葉を聞くよりも先、私は小さなこの腕で力いっぱいに彼を抱きしめた。
久々に感じる、虎杖君の温もり。
「…………ちゃんと、話してよ。」
あの日、あの時。私は貴方に助けられた。
貴方がいたから、こんなにも今が楽しい。
「私だって、虎杖君の力になりたい。」
私の震える手を貴方が握ってくれたように、貴方の震えた言葉を私は拾ってあげたい。
「───お化けなんて怖くないから、
……虎杖君と、一緒に居たいよ。」
死ぬか生きるかよりも、貴方が傍に居てくれるかどうかの方が大切で。
例え傷つけられたとしても、貴方の温もりを忘れてしまうより、私は遥かに。
「……もう、どこにも行かないで」
虎杖君が苦しんだ時、何時だって私が駆けつけてあげられるように。
.
1265人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時