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「おい、橘」
「何?」
「ここまで来といて何だけどさ、お前こんなとこにいていいの?」
───とある休日の昼下がり。
久々の休みを謳歌するべく遅めにかけたアラームも虚しく、部屋の戸を叩く橘によって起こされた俺は何故か昼食につれ出されてしまった。
仲が良くなったのは別にいいとして、最近俺の扱いが虎杖や五条先生に似てきたのは問題だ。現に今だって、出会った当初からは想像も出来ぬ間抜け面でパスタを頬張っている。
「何で?」
「……いや、別に俺じゃなくて虎杖誘えばいいだろ。」
橘は再び目の前の食事に視線を落とすと、今更かと言わんばかりに溜息をついた。
「それがさ、なんか変なんだよね、最近。」
「変?」
「うん……なんか、嫌われてる気がする。」
「いやそれは無いだろ」
食い気味に返してしまった言葉に、橘は一瞬びっくりしたように目を丸めて俺を見た。
柄にもなく勢い付いた声に自分でも驚きつつも、俺は平静を保ち言葉を続ける。
「……虎杖に限ってそれは無い。」
数秒遅れて出した結論は、ここ数ヶ月の彼との時間の末に導かれた答えだ。
虎杖はまず人を嫌うようなやつじゃないし、嫌うとしても何かしら正当な理由があるはず。そして橘は、まあ、彼に劣らずの善人だ。
…………何より、彼奴が橘を嫌いなはずがない。
だって、どう見ても、なあ。
「変なんだって。」
僅かに大きくなった声。
一瞬だけ、店内の音が消えたような気がした。
「…………具体的には?」
溜息の代わりに、それと見紛うような声を出す。
まあ十中八九橘の思い過ごしだろうが、あれほど仲の良かった二人の間に亀裂が入ったのならば事態は深刻だ。
促すような視線を送れば、橘はメニューを握りしめて。
「………虎杖君、すぐ傷作って帰ってくるから、何かと手当してあげてたんだけどね」
「ああ」
「前、頬の辺り触った時に、凄い勢いで弾かれたの。」
「……頬?」
「うん」
一瞬何を言っているかわからなかったが、それは言葉通り一瞬で。
「目の下の傷、触られたくなかったのかな」と呟く橘を見て、俺はいっぺんに悟った。
「何か知らない?伏黒君。」
多分、知ってる。きっと。きっと、彼奴は。
「───……知らない。」
俺の行動は、間違っていないはずだ。
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ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時