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心地よい朝日に照らされて目が覚める。
見慣れない天井に一瞬間呆気に取られ、そして直ぐに自身が置かれている状況を思い出した。
働かない頭で室内を見渡す。私よりもずっと背が大きい虎杖君は、その身に合わぬ小さいソファーで縮こまって眠っていた。
結局あの後、私が眠るまでついていてくれたんだろう。
「……っ、」
かぁ、と一気に顔が熱くなるのが分かる。
昨日は恐怖と眠気で感情が追いつかなかったけど、なかなかに恥ずかしいことをされたものだ。
…………いや、違うでしょ。あれに深い意味なんてない。
虎杖君は私を助けようとしてくれただけ。……にしても、女の子に抱きつくのはどうかと思うけど。それに何より、私だけが意識してるみたいで嫌だ。
やっぱり、そういうことには慣れてるのかな。
「ふー……、起きよ」
ぱちん、と頬を叩いて体を起こす。
今日は初めての登校日だから気合いを入れないと。
惰性で開いたスマホに映る文字は、9時5分。
…………9時?
「虎杖君!!!!」
「……んあ?……橘?おはよ……」
「うんおはよう!!それよりも!!早く起きて!!遅刻!!!!」
前に先生から教えてもらった時程では、朝礼は8時30分から始まるはず。現在の時刻は9時。完全に寝坊である。
もう遠慮もへったくれも無い私はバシバシと虎杖君を叩き起す。殆どダメージのなさそうな彼は、数秒間かけて漸く起き上がったかと思えば、未だ開かぬ目をこちらに向けて。
「今何時?」
「9時!!早く行かないと授業に……」
「……あー、今日は大丈夫。」
ぴしりと指の先まで固まった私。
頭の中で繰り返す虎杖君の言葉。
……今日、は?
「ごめんごめん、昨日言ってなかったな。」
相も変わらず焦りの色を見せない彼は、パキパキと首を鳴らしながら息を吐く。
そんな悠長にされると、逆にこちらが焦ってしまうものだが。
「───今日、任務だから。」
欠伸混じりの声。
私は一度、目を瞬かせ。
「…………任、務?」
やはり聞きなれないその単語は、今この状況を打開する何者にもなり得ない。
そんな私を見兼ねた虎杖君は、にっと口の端を釣り上げて笑う。
「一年皆で“お化け退治”に行きます。」
「お化け退治…………、え、……私も?」
「勿論」
「俺から離れられないんでしょ?」と、虎杖君はニコニコと笑っていた。
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ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時