10. ページ12
.
ぼふん、と軋むシングルベッドの寝心地は上々。ふと視線を壁にやれば、何かしらのポスターが剥がされた後が伺える。
あの後、部屋に入る前に「片付けるから待ってて欲しい」と虎杖君に言われた私は、その間に生徒供用のお風呂に入らせてもらった。
まあ虎杖君も思春期だし、見られて困るものなんて無い方がおかしいよな。
そして再び部屋に帰る頃には、虎杖君の大雑把な性格からは想像できないような小綺麗な部屋がそこにあって。
息を切らしながら笑顔を向ける彼を見て、頑張ってくれたんだなと笑みがこぼれた。
───そして、今。
時刻は夜の10時を少し回った頃。続いてお風呂へと消えていった虎杖君。
これからは自分の部屋になるとは言っても、人様の部屋はどうにも落ち着かない。
例に倣って、ベッドをどちらが使うかという話にもなったが、流石の私達も“一緒に寝る”という選択肢は在らず。
数分の攻防戦の後に、日替わりで交代することになった。そして今日は私。申し訳ない。
結局野薔薇ちゃんと会えなかったなあとか、他にも生徒はいるのだろうかとか。
明日から始まる新生活に期待を馳せ、布団に身を沈めたのだけれど。
「…………。」
寝れない。
「先に寝てていいよ」と虎杖君は言ってくれたが、不健康な生活を送っていた私にとって十時就寝は些か早すぎる。
それに顔を埋めた枕からは虎杖君の香りがする。気を紛らわそうと寝返りをうってもどこかに彼の存在を見いだしてしまう。
それ、と。
『……。』
いる。いるのだ、アイツが。
五条先生の言う通りこの学校に害のあるお化け達、所謂呪霊と呼ばれるものは居なかった。
しかしこの広い敷地内。やはりどこかしらに彼ら異形達は存在する。特に寮というのは過去に誰かが使ってた訳だし、ここに来てからというもの何かと幽霊が顔を出していた。
虎杖君は居ない。居たとしても、寝る時まで触れる訳にはいかない。
『みぇてルょネ?』
煩い、煩い煩い。
何もしないとは分かっていながらも、本能が拒絶する。
嫌になって、目を閉じて。露骨に耳を塞げば見えてると悟られるから、寝返りを打って毛布に身を沈めた。
ずっとブツブツと耳元で囁く声。お風呂上がりだと言うのに得体の知れない汗が背中を伝ってしょうがない。
もう、嫌だ。
「───橘?」
ガチャりと、部屋の戸が開く音。
私は、動くことが出来なかった。
.
1265人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひめな(プロフ) - めっちゃ私の好みの小説でした!出来れば続編のパスワード教えて欲しいです! (12月9日 2時) (レス) @page45 id: b03f19678b (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - 初コメ失礼します!ゆきさんの呪術廻戦シリーズ一気読みしました!!最っ高でした‥虎杖大好きなのでほんと嬉しいです。。虎杖の作品少ないですよね😭😭共感してくれる人いた‥。本当に神作品をありがとうございました!長文失礼しました!! (11月26日 14時) (レス) @page45 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
みるちょこ(プロフ) - コメント失礼します!とても素敵な作品でした!続編のパスワード教えて欲しいです! (2023年3月17日 22時) (レス) id: 2858c63edd (このIDを非表示/違反報告)
ライム - すごくいい作品でした!最後の言葉なんて言ったのかめっちゃ気になります!こんな最高のお話を作ってくれてありがとうございますm(_ _)m (2022年11月5日 12時) (レス) @page43 id: e7904a37c4 (このIDを非表示/違反報告)
あい - 続編のパスワードを教えて頂きたいです! (2022年9月19日 4時) (レス) @page45 id: ea066f037b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月30日 23時