【鬼滅の刃】午前零時のシンデレラ【冨岡義勇】

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｢───……とにかく、不死川と付き合ってんのは絶対に言いふらさないで｣


｢わふぁっふぁ｣


｢パン食うのやめろ｣




お昼。屋上へ続く階段にて。

いつものようにぼっち飯をしている冨岡にそれだけ告げに来た。朝の件と言い何といいこの男は危険すぎる。何をしでかすか分からない、本当に。




｢じゃ、そゆことで｣


｢待て｣


｢ぴゃっ｣





声と同時、後ろ手に伝わるひんやりとした体温。骨ばって少しだけ大きいそれは見ずとも分かる、冨岡の手。




｢せっかく昼飯を持ってるなら一緒に食べよう。｣


｢……なんで私が、｣


｢俺は約束は守る…………が、一人にしたらうっかり口を滑らせてしまうかもしれない。｣


｢…………こいつっ、｣




ぐっ、と奥歯を噛み締めて言葉を飲み込む。

確信犯だ、完全に。


徐々に奪われていく体温が焦れったくて、思わず冨岡の手を振り払った。冷えた腕とは相反して妙に熱い顔。いや、多分気の所為だけど。


渋々冨岡の誘いを了承して隣に腰を下ろした。態と一人分空けた距離も虚しく、冨岡がぐいとこちらに近づいた。

香水ではなく、自然に香るいい匂い。近くで見れば見るほどに整った顔。……なんでこいつ彼女いないんだろう。




｢あ、それ新作のお菓子じゃん｣


｢あぁ、食べていいぞ｣


｢えっ、冨岡のじゃないの？｣


｢Aが好きそうだったから買ってきた。｣




こいつめっちゃ良い奴。




｢明日から公開の映画、知ってるか？｣


｢めっちゃ見たかったやつ……！カナエとかは好みじゃなさそうだから誘えてないけど。｣


｢今度一緒に行こう。｣


｢え、まじ？｣




あの映画、中々人を選ぶ内容だったから誘いづらかったんだよね。普通に嬉しい。




｢…………。｣


｢…………。｣




沈黙。けれども苦ではない。

元々冨岡は口数少ないし、私も気分屋だから黙りたい時も……、



…………あれ？





(…………私、冨岡と結婚してデメリットなくない？)





｢────……A｣




血迷いかけたその瞬間、冨岡の声が響く。

何事かと振り返ったとほぼ同時、彼の顔がぐっと近づいて、思わず目を閉じた。





｢…………ついてたぞ｣


｢……ｯ｣




目を開けた先に見えるは、ふっと優しく笑う冨岡。

口元を擽る感触から察するに、私に食べかすでも着いていたのだろう。恥ずかしい。


────きゅん。


…………いや、それは違うだろ。不整脈だ。



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