黒春 中也さん ページ10
「随分抽象的な説明だな。報告書に書かれてないのって、手前の説明のしかたが悪かったからじゃねぇか」
空になったカップを台所に下げながらそう言った。
「それをうまく要約するのが取り調べする側の仕事じゃないっすかぁ。俺、嘘嫌いなんすよ。ありのままに答えたんすよ?」
「だからありのままに答えるにしろ、もう少しましな説明のしかたとかあんだろ?」
「へいへいそうっすね。さすが組織一の体術使い」
「関係ねぇ」
「さすが電子地図を使うという発想に至らない五体幹部の一員っすねぇ」
「手ン前ッッッ!!!」
へらへらしながらさらりと傷口に塩を塗る圭吾。見ている私は、中也さんカップを割ってしまわないか心配だった。
どうしようか、そう思って私がしたのは
「中也さんは、普段、どのようなお仕事をされてるのですか?」
間抜けで場違いな質問をするということだった。
さすがに場違い過ぎたと思ったのは、圭吾が少しの間をおいて大笑いし出したときだった。
「はぁふははははっは、かなえ、意図がまるわかりっはは!」
だって、こうでもしないとカップが割れかねないのだ。カップが割れる音は嫌いだ。それに、手を怪我してしまうかもしれない。
「はっはぁあははふははっ、先輩っふは、言わないんすか?っはははは」
「手前は頭でも冷やせ」
パシャッと冷水をかけられた圭吾はヒャッと言って寒がった。
「まぁ、医療関係の仕事はしてねぇとだけは言える。色々やってっからうまく言えねぇや。この診療所でも、俺は実際に仕事はほぼしねぇ。やるのは毎週提出してもらう報告書を見ることと、備品を買うことぐれぇだ。」
「!そうなのですか」
「俺は医学に関する教養も、治癒系の異能力もない。首領もそういってただろ」
そういえばそうだった。つい数時間前のことなのに忘れていた。
「だから基本的に手前と圭吾の二人で仕事を回すんだ。楽じゃねぇぞ?」
「…はい。」
そうか。上司と言われたからつい、ずっと私たちと仕事をするものだと思っていた。どうやら違うようだ。少し驚いた。そして少し不安になった。
「なんすかその、『圭吾は役ただずだからかなえ、手前がしっかりしなきゃ行けねぇんだぞ?誤って襲われたりしたら承知しねぇからな』的な発言は」
「「誰もそこまで言ってない!!!」」
…まぁ、私がもっとしっかりすれば大丈夫な話か。頑張らねば。
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みうひ - いってることわからなかったらコメント下さい!書き直しますので! (2019年2月19日 23時) (レス) id: c614937f38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みうひ | 作成日時:2019年2月17日 14時