この気持ちを紅茶と共に混ぜてしまえたなら。

渡せない恋文。四通 ページ4

金木犀の君へ

今日、婚約者とお顔を合わせて来ましたわ。
相手の方は白いお肌によく整ったお顔立ちで、ふわふわと羽のような黒い髪は艶やかで、
笑顔はどこか人懐っこい印象でございましたわ。

スーツを着込んで、正座をして、私の事を一輪の牡丹のように美しいと仰いましたのよ。
可笑しいでしょう?

思わず吹き出してしまいそうになるのを抑えるのに必死でございましたわ。
一緒にお庭をお散歩いたしたのですけれど、私には指一本もお触れにならず、
花の事や天気の事等、中身のない会話ばかりでしたのに、楽しかったのでございますわ。

紳士な方なのかも知れません。

それと、ダイヤモンドの埋め込まれた百合のペンダントをお近づきの印にと、くださいましたの。
とてもキラキラとしていて、眩しくて、美しいペンダントですの。

とっても嬉しかったのですわ。

嗚呼、駄目よ。
惑わされたらいけないわ。

私は金木犀の君を愛しておりますのに。
嗚呼、恋に振り回される乙女も大変なのですわ。

今日は短くてごめんなさい。

それではごきげんよう。

女学生より

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