−1cm。 ページ22
「最初からずっと好きだったって、気づけよバカ。」
改めて、なんて恥ずかしいことを言ってしまったんだろうと思う。けれど、不思議と後悔なんてものはなかった。祥彰君の家を飛び出して、暗い道をヒールを鳴らして走る。私の吐いた息が白く、宙へ舞っては消えていった。
「あーあ…。」
私だって、あんな言い方したくなかった。でも、祥彰君も悪いんだよ。私の気持ちに気づかないままで。
「どこで間違えたんだろ…。」
私はただ、彼が好きだっただけなのに。
______________
「私、山本さんが好きなんです。」
「…へ?」
遡ること数ヶ月前。数少ない女性ライター仲間である彩加ちゃんとランチをしていた時のことだ。
女性ライター仲間、と言っても、彼女とはこうやって2人でご飯を食べる程仲良くはなかった。けど、今日は彩加ちゃんが「相談がある」とのことでここにいる。
「山本くんって、あの山本くん?」
「はい。」
私たち二人に共通した知り合いの山本なんて、あの人しか思い浮かばない。いつも笑顔で、少年のような彼。
「そっかあ…山本君かあ…」
彩加ちゃんが山本君を好きだったなんて、思いもしなかった。確かに、2人は周りから見ても仲のいいほうだと思う。でも、まさかそんな風に思っていたとは。
(諦めるか…)
私も好きだった、なんてとてもじゃないけど言えない。だって、私の“好き”なんて、彩加ちゃんの“好き”に比べれば軽いものだ。ただちょっと気になってただけ。
事実、彩加ちゃんのように2人で遊びに行くほど彼とは仲良くないし、私はオフィス内で遠くから彼を見つめてるだけ。そんな私が彼を好きだなんて、おこがましい。
「Aさん…?」
「っ、ごめんごめん。じゃ、これからは私になんでも相談して!」
「…はい!」
澄み切った笑顔でそう言った彩加ちゃん。そんな彼女の顔を見て、ますます自分の心が殺されていく気分を味わう。
(山本君も、彩加ちゃんみたいな子の方が好きだよなあ…)
こんな淡い片想いはやめよう。私は自分にそう言い聞かせて、気持ちに蓋をした。
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雪(プロフ) - AIKAさん» コメントありがとうございます!次回作も頑張らせていただきます! (2019年1月13日 23時) (レス) id: de60348c8b (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 東雲なのさん» 度々コメントありがとうございます!!東雲様のコメントが励みになりました!こちらこそ最後までありがとうございます! (2019年1月13日 23時) (レス) id: de60348c8b (このIDを非表示/違反報告)
AIKA(プロフ) - 完結おめでとうございます〜☆前作に引き継いで、すごくいい作品でした…!次作も楽しみにしてます。 (2019年1月13日 22時) (レス) id: f10a4e8199 (このIDを非表示/違反報告)
東雲なの(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!このお話大好きだったので更新がなくなってしまうのは少し悲しく思いますが楽しませていただきました、ありがとうございます!! (2019年1月13日 19時) (レス) id: cdd7024e15 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 東雲なのさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとても嬉しいです!! (2019年1月9日 19時) (レス) id: de60348c8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪 | 作成日時:2018年12月11日 23時