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失礼だって、分かってる。 でも 失いたくないから 先輩からの連絡はすべて無視して
放課後も会わないようにダッシュで帰るようになった。先輩が待ち伏せしているときもあるから。
私だって……先輩ともっと話したい。
でも、夢と現実の区別がつかないほど怖いことが起きても、失いたくないものがあるの。
「……あ、今日はまだいる」
掃除当番はサボる訳にはいかなくて、残っていたら もちろん菊池先輩につかまった。
「え、ひとり?」
「……みんな用事あるって、」
「そんなことある?ふつー」
カバンをおもむろに 最前の席に置いて
黒板消しを手にした。
「手伝わなくていいですよ、」
「別に。黒板消したい気分なだけ」
……どんな気分ですか?それ。
ほうきを握る手に思わず力がこもる。
先輩の広い背中に、思いっきり抱きついて
先輩ともっといたいって、そう伝えることができれば……
でも、私にそんなことをする資格はない。
「ねえ、A」
「……なんですか」
「散々振り回しといて、急にいなくなるのはやめろよな」
距離で言うと、5メートルくらい
すぐそばに行ける距離。
「ちょっと、寂しいじゃん」
先輩がそう思ってくれて
涙が出そうになった。
「ねえ、ひとつだけ教えて。
お前は “ ふうまさん ” にしか興味がないの?俺自身には1ミリも興味ない?」
「……え?」
「俺的には、ちょっと寂しかったけど お前が その夢の中の人にしか興味がないなら わざわざ俺に絡んでもらうの、申し訳ないかなって」
違うよ、先輩……私が元々……。
すっかり綺麗になった黒板。手をはらいながら、またカバンを持った。
「……まあ、また気が向いたら声かけてな」
1ミリも私の態度を怒らなかった。
でも、見たことないくらい悲しげな顔をしていた。
菊池先輩、好きです、大好きです……。
私は、どうしたらいいの?
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作者名:ゆき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2021年8月22日 22時