理想のデート

Y’s story７ ページ28

「やっぱ夫婦にみえるのかね？
付き合ったばっかりなんだけどな」

おじさんから、炊き込みご飯の元を受け取った後、渉が笑って言った。

「私達、落ち着きすぎてるんじゃないの？」

「元々、俺もAもテンション高い方じゃないもんね。
そこがいいんだけど」

高校の時は可愛い自分を見せなきゃって意識が強かったけど、今の渉にはいい意味で自然体を見せられるっていうか。

渉とまた付き合えて良かったなって思う。



横尾先生の料理教室。

「お魚、塩もうちょっと多めでいいよ。
１回臭みとるからね」

マンツーマンで教わるのは本当に贅沢。

でも渉から見たら、自分より料理できない彼女ってどうなんだろう。

「料理苦手な彼女でごめんね」

「何で急に謝るの？」

「やっぱ料理できる彼女の方がいいよねって思ったから」

「んなことない。
俺より料理上手すぎたら、料理教室なんて開けないし、俺が妬んじゃうから。
Aはそのままで十分魅力的だからね」

昔の渉からは、こんなセリフ出て来たことなんてなくて。

大人になってすごく変わった。

女の子の喜ぶ言葉を知っている。

色々経験したからなのかなって想像しちゃうと、ちょっと嫉妬しちゃうけど。

「ありがとう。
渉に教わって、料理上手くなって、もっと魅力的になれるよう頑張るよ」

「じゃあ、スパルタで教えるから」

「えー」

「俺、結構Sなの知ってるでしょ？」

って意地悪な目。

でも料理は優しく教えてくれた。



食卓に向かって渉と食事。

「炊き込みご飯、香りがいいね」

「めちゃくちゃ美味しい。
幸せすぎる〜」

食って大切だよね。

美味しい食事を渉と共にすることができて。

一気に素敵な物を沢山手にしてしまって、ちょっと怖いくらい。

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