軍の犬 ページ16
女帝が目にしたのは、ジェシカが倒れた青年を抱え、軍人を見ている光景だった。
女帝には予想外の光景のため、困惑していたが、状況を把握すると怒りが込み上げた。
こんな真似をした大佐に対する怒りと軍人としての自分自身にだった。
軍人としてこれを止めることは許されない。人としてこれを止めることは許されるはず。
自分が軍人であることを彼女は呪った。
しかし、次の光景で女帝の理性が切れた。
ジェシカをクリスチアン大佐がブラスターで殴ったのだ。
片手にはビンを、片手にはブラスターを構え、大佐のブラスターを撃ってみせた。
武器をとばされた大佐は彼女の存在に気づいた。
女帝であると気づいていたかはともかく、セラミック製ブラスターを所持していたことから敵とは認識できた。
大佐は高笑いをしながらジェシカの頭を軍靴で踏みつけた。見せしめと言わんばかりに。
女帝は本領を発揮した。
酒が入っていながら、大佐が防ぐより先に鳩尾を蹴ってみせたのだ。
そして、よろけたところを容赦なく撃った。
女帝が狙ったのは両足だった。
ジェシカが人の死に喜ぶ人ではないと判断したからだ。それが悪役だとしても。
たいしてジェシカのことを知らなかったが女帝は確信していた。
クリスチアン大佐は仰向けに倒れる。
兵士は当然女帝にブラスターを向けたが、一瞬の躊躇いが過ちとなった。
兵士は彼女が女帝だと気づいたのだ。
そのための躊躇いが市民につけ入られたのだ。
兵士からブラスターを奪ったり、殴り合いになったのを彼女は眺めた。
早く逃げなければ捕まるだろうに。
彼女はクリスチアン大佐を見下ろした。
「いい勇気だな。武器を持たない市民に武器を使うなど。しかも抵抗しない市民にだ。」
「秩序を乱したのはあの女だ。」
カーチャルはうんざりして、ブラスターからレーザーナイフに切り替え、クリスチアン大佐の右手に落とした。
「おっと手が滑った。酒のせいかな。」
クリスチアン大佐の叫びをカーチャルは頭から切り離した。
ジェシカの遺体の横に座り、ビンに入っている残る酒をかけた。
ヤンの大切な人であるジェシカ。
女帝はそんな彼女を密かに気に入っていた。彼女の言論を好んでもいた。
まさか、こんなことになるとは考えていなかったが。
「武力で示す我々より、言論で示す平和的なお前さんが先に逝くなんて世の中は理不尽だ。」
カーチャルは頭のなかでヤンに何を言うか考えつつ、捕まらないうちにその場をあとにした。
16人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花子(プロフ) - クルーゼルさん» こちらこそよろしくお願いします!気長に更新待ってますー! (2015年7月10日 13時) (レス) id: 67c88410cf (このIDを非表示/違反報告)
クルーゼル - 花子さん» 友達に一巻を貸してしまい更新が!!EDは決めてありますから、完結はさせます。これからもよろしくお願いします!! (2015年7月8日 17時) (レス) id: 123f7b7524 (このIDを非表示/違反報告)
花子(プロフ) - まさか占ツクで銀英伝小説を拝める日が来るとは…!! (2015年7月4日 18時) (レス) id: 50b1266a99 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クルーゼル | 作成日時:2015年5月13日 21時