遊郭物語 -新都編- 伍 (ページ17)

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「…ねえ、丁度よかった。午後に、あなたの着物を買いに行こうと思ってたの」

「僕の、着物を？」

「ええ。一緒に来る？」

「はい！是非！」

「それじゃあ、三時までに支度をしておいてね」

「分かりました。…楽しみだな…！」

白い歯をこぼして笑う。
その笑顔を目にしながら飲む紅茶は、いつもよりも美味しいと感じた。

不意の沈黙。

華やかな香りの中、

私を見上げるドヨンの顔色を見てやっと気付く。

…無意識に、彼の髪をまた撫でていた。

私は力なく手を下ろし、自分の膝の上におく。
ドヨンは困ったように笑った。

「ははっ、やっぱりお疲れみたいだね。ヌナ」

「…季節の変わり目だからかしら、ね。暫く横になるわ」

「…」

体勢を変え、背もたれに掛けていた毛布を手に取りソファーに横になる。

目を閉じても、

…なんの物音もしないから

不思議に思い、瞳を開ければ

ソファーのすぐそばに身を寄せたドヨンが、
私の顔をなんだか思いつめた様子で見つめている。

私の頬に、手を伸ばす。

触れ合った体温の、おかしな心地よさ。

「…何か、辛いことでもあった？」

まるで、子供を慰めるかのような口調。

…こんな顔、この部屋以外では見せられるものじゃないわね。

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