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『団長、悪いけど…きっと私はいつか、あの星に里帰りする』
「...」
Aの言葉に神威は黙る。
その言葉を聞きたくなかったのだろう。
「なんであの星に執着するのか、家族を捨てて出てきた俺にはわからないな」
『私だって、家族はいないさ。でも、未練を残してここに来たんだ。その未練も、もう消すことはできないだろうけどさ』
「じゃあ、里帰りしても虚しいだけだよ。そんなものを気にするくらいなら、ここにいればいい」
Aを春雨から出さないためか、ただのAへの気遣いなのかはわからない。
でも、Aはその言葉を素直に受け止めた。
『虚しくなるだけ...か』
第七師団に少し慣れたとはいえ、まだ不安があるのだろう。
一時的なホームシックだ、とAは受け止めることにした。
『はあ...考えすぎて疲れた。もう、風呂に入ってさっさと寝ようかな』
「明日は楽しい楽しい、戦闘任務だよ。そんなで出られたら、Aの実力が見れないし」
神威は部屋の出口へ向かって歩き出した。
Aは神威に向かって言った。
『ごめん、馬鹿なこと言って。団長に弱いとこ見せるなんて、期待外れのやつだったろ』
「言っただろ、見込みはちゃんとある。弱いやつには興味はないけど、Aには興味はある。じゃあね」
神威はそう言って、Aの部屋を出ていった。
その後、Aは少し安心した面持ちで休む準備を始めた。
神威side
俺がAの部屋を出て歩いていると、阿伏兎に会った。
阿伏兎は俺を見るとこう言い始めた。
「お前さんも、野獣の仲間入だな」
「言ってる意味がわからないよ」
「おかしいと思ったんだ、あの嬢ちゃんをいきなり迎えにいくと言い出した時によ」
見込みがあったから、という理由で連れ出した。
阿伏兎はそれじゃないほかの理由があると言いたげだ。
見込みがある、これは本当のことだ。
でも、他に理由があったということも否定はしない。
「阿伏兎は、俺がAのことを昔から好きだった、こう言いたいんだろ?」
Aにはちゃんとした魅力がある。
小さい頃、力の差をわかっていながらも第七師団に立ち向かった。
無謀なことだと、最初は思った。
小さい頃闘っても、俺の方が強かっただろう。
だが、無謀だったとしてもAには強さがあった。
俺はきっと、そこに惹かれたんだろう。
「で、実際どうなんだ?」
「んー、グレーゾーンかな。恋バナ好きなの?」
「違ぇよ、団員たちがうるせぇだけだ」
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ゆう(プロフ) - 雪さん» ご報告ありがとうございます!直しておきました! (2020年1月28日 22時) (レス) id: 6c784c5756 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - ちなみに16話の最後から3番目の [ ○○は、よく母から紙を整えられていた]のところです>< (2020年1月7日 20時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 気になったんですけど、 紙じゃなく髪じゃないですか? 勘違いだったらすいません。(16話) (2020年1月7日 20時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - YUKARI♪さん» ありがとうございますー!!妄想力しかないもので拙い文書ですが... (2019年11月29日 10時) (レス) id: 6c784c5756 (このIDを非表示/違反報告)
YUKARI♪ - すごく面白い…どうやったらこんな面白い物が…とにかく!凄い面白かったです!!! (2019年11月29日 6時) (レス) id: a01ec1bc5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よっちゃん | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月21日 17時