*17* ページ18
Aは三つ編みにされた長い髪を後ろから前に持ってきて見てみる。
等間隔にきれいに編み込まれた三つ編みだった。
『器用だなぁ...』
「まあ、毎日やってたからね」
Aは三つ編みなんてやったことがなかった。
自分が今までしたことがない髪型をしていると思うと、なんだか嬉しく恥ずかしい気持ちになったようだ。
「なんだか嬉しそうだね」
『い、いや...こんなことした事がなくて』
自分が今どのようになっているのか、鏡で見てみたくなった。
だが、Aの部屋には鏡がなかった。
神威にお願いしようかとも思ったが、なんとなく恥ずかしいようで頼めなかった。
『団長、もしかして…私よりも女らしかったり...』
「しないよ。手が器用といわれても、俺にはこれだけだ。女らしさは女にある。男にはない」
『女らしさ...』
神威はそう言うものの、Aは自分に女らしさが欠片も無いと思い始めた。
神威に負けたような気がしたのか、急に気にし始めた。
人類が一人という星で、自分が生きるための最低限度のことしかしない生活。
身なりを気にしたことなんて無かったAは、この春雨に来てから人目を気にするようになっていた。
「Aどうしたの?これ、気に入らなかった?」
『そうじゃない。私に女らしさが無いことを痛感しただけさ』
「えー?そうかなぁ」
『器用じゃない、すべて大雑把...。私は野生動物と一緒に育って女ということすら、忘れていたかもしれない』
Aは自分の長い髪を見て、故郷の星を思い出した。
両親を無くしてから伸びっぱなしの髪、自分が看取った野生動物たち、大雨の後に干上がった荒れ果てた大地。
自分もあの星で死ぬつもりだった。
なのにどうして、この船に乗って宇宙を旅しているのか。
どうして、無理やりにも頼んであの星に戻らなかったのか。
どうして、第七師団はAを助けたのか。
『団長、どうして…私を拾った...?』
「A...?」
『私はあの星で野垂れ死ぬを、許さなかったのさ』
「言っただろう、昔は連れてけなかった。だから迎えに来た。今更ホームシック?最初は君も乗り気だったじゃないか」
"あの星を捨てることにして、仲間になる"
これはAが言った言葉だ。
自分から捨てる覚悟で仲間になったはずなのに、罪悪感がAの心を埋めつくした。
『...本当、今更さ。失ってから大事さに気づいた』
「あの星に帰ろうなんて言わせないよ、俺が責任もってここに連れてきたし」
41人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆう(プロフ) - 雪さん» ご報告ありがとうございます!直しておきました! (2020年1月28日 22時) (レス) id: 6c784c5756 (このIDを非表示/違反報告)
雪 - ちなみに16話の最後から3番目の [ ○○は、よく母から紙を整えられていた]のところです>< (2020年1月7日 20時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
雪 - 気になったんですけど、 紙じゃなく髪じゃないですか? 勘違いだったらすいません。(16話) (2020年1月7日 20時) (レス) id: 16253bb5bd (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - YUKARI♪さん» ありがとうございますー!!妄想力しかないもので拙い文書ですが... (2019年11月29日 10時) (レス) id: 6c784c5756 (このIDを非表示/違反報告)
YUKARI♪ - すごく面白い…どうやったらこんな面白い物が…とにかく!凄い面白かったです!!! (2019年11月29日 6時) (レス) id: a01ec1bc5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:よっちゃん | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月21日 17時