戯言3-7 ページ8
携帯の履歴を見ると4869という名前表記がズラーっと並んでいた。
無論、工藤君だ。
「おいなんだよ。セールスは受けつけてないぜ。」
全部言い終わる前に電話口から大きな怒鳴り声が響いた。咄嗟に耳から携帯を離すが、話していても彼の声は聞き取れるぐらいにはうるさい。
前に座っている2人も驚いたように此方を振り返っている。
「デート中に一体なんの用?あ、ごめんごめん。君も混ざりたかったよね。言ってくれれば良かったのに。」
『おい早いとこ王女様が戻って来ないと、蘭が大変なことになってるんだ!』
「へぇーそれは大変だね。」
『他人事じゃねぇーんだぞ!そこにいるんだろ?王女様がよ。』
黙って聞いていた2人だったが、そのセリフを聞いた王女様が電話中にも関わらず大きな声で反論した。
「嫌よ!絶対嫌!!私は帰らない。もうあんな所は嫌なの!」
「…だそうだよ?」
電話口の彼にも聞こえたらしく、まだ諦めきれないのかブツブツ言ってる。やっぱり面倒臭いな。
「どーでもいいけど、僕は君が言うように何か企んでるらしいから、君には何もしてあげられないや。ごめんね!」
『おい!A…っ』 ブチッ
電話を切ったばかりなのに着信が止まらない。しつこい男だ。
「良かったの?彼、お友達なんでしょ?」
不二子ちゃんが運転しながら聞いてくる。とりあえず携帯の電源をoffにしてポケットに突っ込んだ。
「別に大丈夫だよ。それより僕も依頼された身だから、精一杯お勤めしないとね。」
「依頼?」
別に依頼なんて何も無い。でもこのまま日本に置いてけぼりになるのも面白くない。
そう、面白くないんだ。
「不二子ちゃんと同じだよ。だから安心して、泥船に乗った気持ちでいてよ。」
それを言うなら大船なのでは…?そう思っても誰も口には出せなかった。
神代Aが口にするセリフはどれもこれも嘘くさい。何を考えているか分からなくて気味が悪い。
そんな彼が言うならば、大船より泥舟の方がピッタリなのかもしれない…そう思わせる程には、彼の異常さは明らかだった。
✮
翌日、中々に日本を満喫した僕達は今からヴェ…なんとかって言う国に向かう。
「楽しみだねー、ババロアだっけ?」
「ヴェスパニアよ…。」
1文字しか合っていない。相変わらずの調子だが、それでも彼は気にしない。
「海外旅行なんて実は初めてなんだ。前から行ってみたかったんだよね。」
不二子ちゃんといればお金もかからない。パスポートだってこの世界に来てから作ってないし、あるわけない。
きっと素敵な旅になるはずさ。
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イロハ(プロフ) - セイさん» セイ様へ、長い間お待たせてすみません。ですが覚えてくださった方がいてくれてとても嬉しいです。コメントまでして下さって、もっともっと精進しつつ続けていきたいと思いました。これからもよろしくお願いします*ˊᵕˋ* (1月10日 11時) (レス) @page16 id: 7c23aeb2f0 (このIDを非表示/違反報告)
セイ(プロフ) - 続編ありがとうございます。更新通知が来て舞いあがっちゃいました。また神代君の戯言が見られて嬉しいです。欠けた心を持つ神代君と彼に振り回される主人公達が大好きです。次の更新も楽しみにお待ちしております。 (1月10日 8時) (レス) id: ec218c72f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イロハ | 作成日時:2023年12月24日 19時