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突然、Aが尻もちをつく。
水しぶきが立ち、驚いた夏油もすぐに近くに寄った。
『痛い…』
「すまない、大丈夫か?」
『うん、大丈夫だよ』
相当楽しかったのか、転んでも嬉しそうな表情をしていた。
「つかまって」
『ありがと!』
夏油が差し伸べた手を、取る。
すると、いきなり強い力で引かれた。
突然のことに、構えていなかった夏油はよろける。
そして、先程のAよりも大きな音と水しぶきを立てて、夏油が水中に膝を着く。
Aに手を引かれ、倒れ込んだあと、すぐに顔を上げる。
「いきなり何するん___」
そこまで言って、夏油は目を見開いた。
目の前にはAの顔があり、現状を把握するのに時間がかかった。
今、夏油はAの足を跨ぐ形で膝を着いており、ほぼ密接している状態にある。
微かに残る夕日が2人の表情を鮮明に見せる。
『ご、ごめ…ん…』
「いや…私の方こそ…」
すぐに離れ、立ち上がる。
「帰ろうか、風邪を引くといけないからね」
『そうだね…!』
2人は立ち上がると、歩いていく。
「高専が近いから寄っていくといいよ、そのままじゃ電車乗れないだろう?」
『確かに、そうしようかな…』
いつもより少しぎこちない会話になる。
その間、夏油の頬が少し紅かったのは、きっと夕日のせいだろう。
✱
帰る途中、時々すれ違う男が、ちらりとこちらを見てきた。
最初こそ、濡れているからかと思っていたのだが、明らかにそういう目ではなかった。
不審に思い、隣を見ると、夏油はすぐに察した。
すぐに自分が羽織っていた上着を脱ぎ、Aの肩にかける。
もちろん、その上着だって濡れているので冷たいわけだが、こればかりは仕方がない。
『どうしたの?』
「ごめんね、その上着も冷たいだろうけど着ていてくれないかな?」
『…うん?ありがとう』
Aはよく分かっていない様子だったが、気づいていないなら、そのままにしておこうと思った。
下着が透けているよ、なんて彼氏でもない男が言ったら気持ち悪いと思われるかもしれない。
そしてすぐに自分はそのことを忘れるよう努めた。
だが、夏油も健全な男子高校生である。
高専に着くまでの間、彼女の下着の色が脳裏にこびりついて離れなかった。
そして、Aを硝子に預けた後、夏油は部屋で頭を抱えていたんだとか。
貴女の彼氏or彼女は??
新田新
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結衣(プロフ) - コメントありがとうございます。とっても元気が出ました!更新頑張りますね!! (3月31日 19時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
えす - 続きおねがいします!!! (3月31日 18時) (レス) @page30 id: 93a8495db4 (このIDを非表示/違反報告)
結衣(プロフ) - 神様さん» お返事が遅れてしまいすみません。そう言っていただけて嬉しいです!頑張ります! (2月2日 16時) (レス) id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - 面白かったです!更新がんばってください! (1月21日 18時) (レス) @page24 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
神様 - ありがとうございます(≧▽≦)面白かったです! (1月17日 18時) (レス) @page22 id: 9fd19e5354 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:結衣 | 作成日時:2023年11月28日 19時