検索窓
今日:11 hit、昨日:2 hit、合計:59,564 hit

第33話 ページ35

今見ている光景を認めたくない、自分が今思ってしまったことは認めたくない、認めてはならない。でも、



「...綺麗だ」



口から出てしまったその言葉に後悔しかないが、その言葉に嘘偽りはない



それ程までに綺麗で、心を奪われるほどの舞に獪岳は目が離せないでいた



満点の星空の中心で輝く満月、その月下で舞う羌は天女に見え、獪岳の頬を一瞬にして紅く染め上げる



ふわっと軽い足取りで舞うその姿は重力という目には見えない力があの場だけかかっていないように感じられた



持っている剣はすっと流れる動作で空を切り、光の反射で光る剣先は羌の輝きを表すかのようにキラキラと光る



手は袖に隠れ、舞う度にヒラヒラと揺れるあの民族衣装は赤いのにもかかわらず、何故かこの庭の風景に溶け込んでいた



そして、トーンタンタンという音。なんと表現したらいいのか分からないが、心にすとんと落ちるような聞いていて飽きない音だ



「どうじゃ、惚れたか?」



そう茶化すように聞いてくる先生に対しムキになって「違います!」と即答するが、その声は小さく、それはまだ聴いていたいという自分の本能の表れだった



それを見た先生はにこりと笑うとまた口を開いた



「獪岳、あやつの舞を今しがた綺麗だと思ったか?」



バレてしまっていたが、それでも肯定するのは恥ずかしく無言になる。しかし、先生はそれを肯定とみなした



「実はな、あやつは元"暗殺者"だったのだ。わかりやすく言うと"人殺し"といったところじゃろう」



突然の新事実に驚きを隠せないが、気にせず先生は続ける



「あの舞は、人を殺すための力として神を身に宿し、神の如き力で人を斬る舞なんだそうだ」



あの美しい舞が人を殺すための舞だというのか?信じられないが信じる他ないだろう



それだったら何故今その舞を舞っているのだろうか



「あやつには面白い癖があっての、人間関係で悩みすぎるとああやって頭を空にするために舞を舞って忘れようとする癖があるのだ


それにしても今回は何が原因なのかの...」



ふむと顎に手を当て考える先生に正直心当たりしかないが、


「俺のせいです」


なんて言えるはずもなく、ただ黙っていた。

第34話→←第32話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
57人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

戦力外(プロフ) - 甘音 舞影さん» ご指摘ありがとうございます! (2020年2月28日 14時) (レス) id: dcb72e1adc (このIDを非表示/違反報告)
甘音 舞影(プロフ) - プロローグの金臭い血の匂いは鉄ではないですか?いきなりすみません (2020年2月27日 22時) (レス) id: 299a382383 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:戦力外 | 作成日時:2019年8月13日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。