間違い電話がかかってきた【文スト】

6コール 此処 ページ7

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「どうしたの？」




明くる日。お昼を友人と済ませて、帰る途中


友人が私にそう聞いてきたのは、そんな時だった





『え……何が？』



「なんかさぁ、アンタ元気なくない？」



友人が不思議そうに此方を見ている





『ああ…、ちょっと…考えてた』



「考えてたって……昨日の事？」



『うん…』



察しがいい友人である






…昨日の出来事があまりに怖かったので、私は親友の彼女に相談した


とはいえ、相談といっても、マフィア云々はいえる訳がなく、“昨日、間違い電話をかけてきた人が怖かった”としか云っていないのだが


それでも、誰かに云う事で自分を安心させたかったのである







「大丈夫だって。きっとその人に会うなんて事ないよ」



よほど不安そうな顔をしてしまったのだろうか。友人が私を元気づけるようにそう云った




『うん……そうだよね』



…そうだ、第一、あれは間違い電話なのだ

相手も、私も、お互いの顔なんて知りやしない



そもそも、相手がずっと遠く離れたところに住んでいる可能性だってある

遠くじゃなくても、近くはないだろう



日本の人口、約一億人

女性が半分だとして、約五千万分の一

例え相手が優れた情報収集力を持っていたとしても、私たった一人を見つけるのは至難の業だ



それならば見つからない。


きっと大丈夫……多分






電話でよかったと思う事にしよう。うん、そうだ。



電話さん、ありがとう。いつか君を好きになってみせるよ…






……と、そんな私の脳内シミュレーションという名の妄想は、突如鳴り響いた音に遮られる事になる








「あ、パトカー」






けたたましいサイレンを響かせて、一台のパトカーが通りすぎた


それを見て、友人が云う




「……最近、よく見るよねー、パトカー」



『うん…。何かあったのかな…？』



「むむっ！事件の香りが！」



『君の出る幕じゃないよ、探偵さん』




くだらない掛け合いをしているうちに、パトカーの音は遠のき、聞こえなくなった

後に残ったのは、さっきとは打って変わった静けさ





「…こわいねぇ。」


友人がふと、呟いた



「気をつけなよ？」


『お互いにね』


「だね」




軽く微笑むと友人は再度、パトカーの行った方を見やって云った






「にしても、_____横浜(ココ)も随分と物騒になったなぁ」






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