間違い電話がかかってきた【文スト】

29コール らしくない ページ31

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マフィア本部からの帰り道で、俺は一つ欠伸をした




「疲れた…」



仕事を終えて帰る道。あたりはもう真っ暗である






_____Aはもう帰ってんのかな…


道に点々と並ぶ街灯を眺めながら、ふと、そんな事を考えた




普段なら俺がアイツよりも早く帰っていることもあるのだが、最近はもっぱら仕事が忙しくて帰るのが遅く、そんな事は滅多にない


それは今日も今日とて例外ではなく、矢張りアイツはもう帰っているのだろう



やけに怠い体に鞭打って歩きながら、ソファでくつろいでテレビを見るアイツの姿を想像した





俺を待ってくれていたりしないかな、なんて考えがよぎって、一人苦笑する




「んな事あり得ねぇよな…」



…マフィアの帰りを待つだなんて




モヤモヤとした気持ちを振り払うように首を振った






_____でも、今日は……



片手にぶら下げた紙袋を見て、俺はそっと微笑む


喜んでくれるだろうか、なんてらしくもなく思い浮かべて、少し体が軽くなった気がした




「あー、あー。ほんっとらしくねぇ」




投げやりに放った言葉は夜の闇に吸い込まれる



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