間違い電話がかかってきた【文スト】

24コール 確信犯 ページ26

*





アパートに着くと、いつぞやのように彼は壁に寄りかかっていた


そしてまた不機嫌そうに此方を見る




「遅ぇ」



あいも変わらず理不尽な彼である





『……人を呼び出しておいて』


「あ？」


『ナンデモナイデス』


ぼそりと本音を云えば、彼に軽く睨まれた









『はあ…』




ともかく、ドアを開けなければ



そう思ってコートのポケットに手を入れる







『…ん？』




次に、反対側のポケットに手を突っ込む





『…え？』




縋るような思いで、バックの中に入っている財布を取り出してその中身を確認





『…あ、あれ？』




泣きそうになりながら、バックもあさる





でも、





『無い……鍵がない！』





どこにも鍵は見つからなかった





どうして無い？


もしかして、落とした？


だとしたら、どこに⁉もしかして、居酒屋⁉







思わぬハプニングに少しパニック状態になっていると、

途端に聴こえてくるため息






「……ったく、何やってんだよ」


まったくコイツは…、と云わんばかりに彼は額に手を当てた




『ど、どうしましょう…これじゃ家に……』



助けを求めるように彼を見ると、彼はまるで小さな子供を叱るように私に言った






「あのなぁ！もっとしっかりしろよ⁉社会に出たらやっていけねぇぞ！」




…マフィアに社会云々について云われるこの状況はなんなのだろうか


そう思ったが、これは明らかな私のミス。ただうつむくしかなかった







『……ごめんなさい』




そんな私を見ると、

彼は居心地が悪そうに目を泳がせて、「ああ！糞っ！」と自身の髪をわしゃりとかきあげる




「…そんな顔すんな！」


『…え？』


「そーいうの、調子狂うんだよっ！」


『はあ…』



「もういい、反省しなくていいから！いや反省はしろ！」


『えぇ……？』



急に意味不明な事をまくしたてる彼


あまりに慌てた様子に、ぽかんとしてしまう









でも、何故だろう



____そんな彼を見ていると、沈みかけていた心が、ふわり、と浮かぶような気持ちになった









ともかく！と彼は続ける



「とりあえず今回は大丈夫だから、次は気をつけろよ⁉な⁉」


『……は、はい』




そう云って彼は部屋のドアの前に歩いていく






そして、




___ポケットから合鍵を取り出した(、、、、、、、、、、、、、、)






………ん？







*

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