慣れてきた頃に ページ6
あれから私はリザさんが住む家に居候することになった。勿論、部分的記憶喪失のふりのまま。
そして改めてきちんと理解した。
ここはアメストリスで、東方司令部がある場所だと。
ココには、彼らはいないのだと。
寂しいと、思うのはいけないことだ。
私が、彼らから離れたのに。
「…あれ、これ…」
机の上にある書類。これはリザさんのものだ。
「必要、だよね。」
出掛ける準備をして外へ出る。あの場所でも外には滅多に出なかったけれど、未だに慣れないこの景色に歩いて東方司令部へ歩いていく。その途中で
「お嬢ちゃん。」
腕を掴まれてしまう。振り返れば知らない男性。
「…離して。」
「ちょっとおいでよ。いいものあげる。」
私の声を無視してずるずると引きずられてしまう。引きずられる先が路地裏で焦る。
(どうしよ…)
他の人は私たちのことを見て見ぬ振りをしてる。助けて欲しいのに、声が出ない。こういう時にどうしたらいいのか、知らない。
「やだ…っ…」
ぎゅっと目をつぶってしまう。
「…っ…ツナ…！」
無意識に呼んでしまうのは頭に浮かんでくる私の大空だったのに。
「嫌がってるから離しなよ。」
ガシャガシャ音がしてそんな声が聞こえた。
「あ？なんだてめっ…！」
「その子、離しなよ。」
そっと目を開ければ、大きな鎧が私の腕を掴む男の腕を掴んでいた。
(…あ…)
彼は−−−−−−−−
「聞こえなかった？離せよ。」
鎧の目がキラッと光った気がした。
「ひっ…」
男はそれに怯えて私の腕を離してバタバタと逃げていった。私はぺたん、とその場に座り込む。
(こ、怖かった…)
「君、大丈夫？」
ガシャガシャと音がして顔をあげれば片膝をついて私の様子を伺う鎧姿のひと。
「…だいじょ、ぶ。ありがと。」
「家はどこ？送るよ。」
その声にふるふると首を振って
「…コレ……届けないと…」
腕に持つ封筒を見せる。
「じゃあ一緒に行こう？女の子が1人で歩いてちゃ危ないよ。」
「…でも…」
「あ、ボクはアルフォンス・エルリック。」
渋る私に鎧姿のひとは、名乗った。怪しくないよ、と言いたいらしい。
「…私は、A…」
「Aって呼んでもいい？」
こくり、と頷けば
「良かった。ボクはアルって呼んでね。さぁ、立てる？」
手を差し出してくれるアル。その手を取って立てば
「アル？どこ行ってたんだよー。」
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作者名：もっくん | 作成日時：2017年4月1日 2時
