何も知らない彼女のこと ページ24
▽アルフォンスside
その後Aは眠ってしまった。すやすやと眠る姿は少し幼い。綺麗な黒髪が顔にかかっていてそっとずらしてあげる。人形のような綺麗な顔が見えて口を開く。
「…ねぇ兄さん。どうして狸寝入りしたの。」
兄さんはずっと寝たフリをしていた。Aは気が付いてなかったけど、ボクは分かっていた。
「……アルにはバレるか。」
「当たり前だよ。何年一緒だと思ってるのさ。」
そう言えば兄さんは目を開けてAを見た。そして起き上がってちゃんと座った。
「……コイツが"いらない子だった記憶がある"って言っただろ？」
「うん。」
「何のために生きてるのか、分からない。そう言ってたけどよ、今まではどうやって生きてきたんだろうな。」
確かに。この子は身なりは綺麗だったし、言葉遣いとか姿勢とかも何処かのお嬢様みたいな感じだ。だからこそ、家の人たちが何も言わないのが"おかしい"のだ。
「…それにコイツさ……オレら見てなんも言わねぇのは、おかしいと思うわねぇ？」
それは思った。思ったけど。
「……優しい子じゃん。兄さんも聞いてたでしょ？Aは、こんなボクを優しい人だって言ってくれた。……自分が邪魔になったら置いていってって言ってた。何も言わないで置いていってって。」
それで大丈夫だから、と無理やり笑うAが酷く印象的だった。
「……置いていくと怒られるのは俺だろうな。」
苦笑する兄さんに頷く。
「中尉に怒られるね。」
絶対置いていかないよ、A。
兄さんだって、置いていかないよ。
「何も知らないなぁ…Aのこと。」
「……これから知るだろ。」
今度はちゃんと寝る体勢になった兄さんはぶっきらぼうにそう言った。
「…うん、そうだね。」
兄さんだって、ちゃんとAのこと見てあげてよね。
Aはずっと兄さんの言葉に
傷付いてるんだから。
(それを言わないのはAが言うのを待っているためだった)
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作者名：もっくん | 作成日時：2017年4月1日 2時
