最後の祈りを【蘭ジャン】 (ページ14)

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あの出会いをもう一度 -Side Story- ページ14

(番外編。拓勝。神童目線です。)

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初恋は実らないと、誰が言ったのだろう。

10年前の俺は、それに深く共感していた。

プルルルルル……ガチャっ。

ワンコールで出た電話の先からは、ドタドタと騒がしい音が聞こえた。

神｢すごい音だな。まさかお前……やっぱりか。急いでて事故とか合うなよ？また連絡するから。｣

ブチッ。

神｢こんな日に寝坊するか普通…？｣

俺はため息を漏らしながら、目的であった内容をメールで送った。

携帯を片手で閉じ、ポケットに入れる。

神｢さてと……｣

どうしたものか。

仕事の関係で少し遠い県に来たものの、まさか迷子になってしまうとは。

会社には遅れると連絡を入れた。正直、今日の会議は俺がいなくても進むだろうし。

ブー……

神｢？｣

再び携帯を開く。

霧野からだ。

《了解。行ってくる。》

霧野は、数年前に語っていた通りフランスへ旅行することに決めた。

自分に力をくれた彼女が生まれ育ち、そして命を懸けてまで守ったその国へ。

霧野は前に進もうとしている。きっと帰ってきた霧野は、以前とは違う表情になっているはずだ。

神｢…じゃ…俺は…？｣

ふと、道先にある少し栄えた豆腐屋が目に入った。

けれど直ぐに逸らして、手に持った携帯をぎゅっと握った。

…俺は、進めているのだろうか？

あの頃は力を手に入れ、確実に成長と遂げていた。

でも…彼女と笑顔で別れられなかった俺は、彼女以外の人を選ぶことが出来るのだろうか？

神(お勝さん…あなたは今、どこで何をしているんですか？俺は、今すぐにでもあなたに…)

……馬鹿馬鹿しい。そもそも、彼女がこの時代にいることさえありえないんだ。

数人の主婦達で賑わう豆腐屋の横を通り過ぎようと、歩き出したその時────。

？｢きゃっ…！｣

バシャッ……。

神｢わっ…！｣

丁度水撒きをしていた少女の水が、俺のスーツに少しだけかかる。

？｢す、すみません…！タオル取ってくるので、こちらで待っていてください！｣

神｢いえ、少しだけなので。大丈夫────｣

顔をあげた時、心配そうにこちらを見る少女から、目が離せなかった。

神｢…！｣

『拓人様！』

……初恋は実らないと、誰が言ったのだろう。

？｢？あの…？｣

神｢あ…すみません、やっぱ借ります…。｣

それは、割と簡単に覆せるらしい。