【HQ】父親って。

みそじ あまり やっつ ページ40

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　緊張からか何からか、ごくりと唾を飲み込む。




「……そうですけど」




　半ば呟くようにそう答えた。

　どうしてこんなことを聞くのか。 何しにここに来たのか。 察しはつくような、つきたくないような、つかないような、曖昧なところだ。




　──どうか。

　私の不毛な考えを、断ち切ってください、神様。


　そう願いながら、きっと本心ではそう思ってないのだろうと、思う。

　私は最後まで、嘘つきの大馬鹿者だった。


　そう、最後まで。





　ドクンドクンと、心臓が鳴る。

　私の考えていることが、当たればいいのに、当たるんじゃないか、そう思う。

　そう思って、何度裏切られてきたのか。願いが、叶わなかったのか。忘れたのか。


　きっと、忘れたのだ。 忘れたかった。 悲しい記憶には、全部全部蓋をした。『わたし』に押し付けた。 遠回りをした。




　でもそれが、終わりを迎えるのなら。

　きっとそれ以上に嬉しいことはないだろう。










「……A」




　不意に、名前を呼ばれた。

　大きく目を見開く。

　かすかすと、喉が掠れて上手く声が出せない。




「A、なのか？」




　頷きたいような、頷きたくないような。

　だってこんなに待たされた。気づいてもらいたくて頑張った。

　ちょっとくらいいじわるしたくて、でもそれは私が耐えきれなくて、いつしかぽろぽろと涙が零れていた。



















「──おとう、さん」




　それは、私が人生でいちばん口にしたかった言葉。


　あなたに、お父さんに、いちばんに伝えたかった言葉。


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