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「来ない…」
それから15分が経って、最初の花火が打ち上がってしまった。飲み物を買ってくると言った健人くんは、まだ戻って来ていない。
すごく並んでるとか?知り合いに会っで話し込んでるとか?トイレでも行ってるのかな?
色々と、考えれば遅くなる理由なんてあったし、とりあえずその場で待っていたら持っていたスマホが短く震えてメッセージを知らせて、慌ててメッセージを開く。
Kentoごめん、急用できちゃったから菊池達と合流してもらってもいいかな
Kento本当にごめん
何、それ。
まだ花火だって、一緒に見てない。
話したいことも、まだまだたくさんあったのに。
浴衣姿の健人くん、もっともっとたくさん見ていられると思ったのに。
写真だって、2人で撮りたかったのに。
「なんで…」
どこ行っちゃったんだろう。心配で、不安で、寂しくて、ドンドンと打ち上がる花火を周りの人達が見上げる中、私だけが下を向いていた。
アキちゃん達に連絡、も考えたけれど今の状況を話したら心配するだろうし、3人は3人で今頃花火を楽しんでいるだろうし。
がんばれ、と言ってくれた2人の笑顔を思い出したらなんだか寂しくて、悲しくて視界がぼやける。わたし、健人くんに嫌なことしちゃった?だから帰っちゃった?浮かんでくるのはマイナスなことばかり。
1人でこんな所で泣いているのがいたたまれなくなって、私は立ち上がって人の少ない場所を探す。泣いているのを隠すように下を向いて、辿り着いたのは、去年、『ここ人少ないからゆっくり見れて穴場なんだよねー』と風磨と訪れた境内の裏階段。
風磨の言う通り、やっぱり人は少なくて、もしかして、風磨達居るかなあ、なんて思ったけれどそこに3人の姿はなかった。
「っう、…」
悲しくて、心細くて、階段に座って浴衣の袖を握りしめて下を向いて溢れる涙を擦った。こんなとこで、1人で泣いてるなんて、本当にかっこ悪い。せっかく、浴衣も買って髪の毛だって、やってもらったのに。2人で、見れると思ってたのに。
「A!」
顔なんか見なくたって、声だけでわかる。
どうしてこの人は、わたしが泣いてる時に限っていつも飛んできてくれるんだろう。
どうしてわたしが泣いていることが、わかるんだろう。
顔を上げると、涙で歪んだ視界の中に、息を切らした風磨の姿が揺れていた。
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みゆ(プロフ) - ぷぅ∞さん» ぷぅさん初めまして!嬉しいお言葉ほんとにありがとうございます!これからも切なく甘くを目指して完結頑張るので応援おねがい致します! (2019年5月3日 19時) (レス) id: c270fe5c87 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ∞(プロフ) - 初めまして。いつも更新を楽しみにしています。風磨くんの切ない恋にきゅんきゅんしています。更新頑張ってください! (2019年4月30日 18時) (レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆ | 作成日時:2019年4月9日 22時