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「A、最近王子といい感じだよね」
取り残された俺と市川、別の講義を受けていた松島も合流して3人で駅までの道を歩く。市川アキ、Aが高校に入って出来た初めての友達だ。入学式の日に、友達が出来た!と嬉しそうに市川のことを話していたAを思い出す。
「ねっ!Aちゃん、健人くんといる時いっつも目がハート」
「アイツが楽しそーでまあ何よりだわ」
「菊池先輩いいの?2人が付き合っちゃっても」
「別に?結婚するわけじゃねえしいつか別れんだろ」
そう。付き合ったとしても、別れはやってくる。そしてまた俺の所に泣きついてくるんだから、いいんだ、それで。
「……風磨くんすごい精神力」
「ふはっ、まあねー。何年もあいつの隣に居たら慣れたよ。てか何?俺そんなわかりやすい?」
「うん、Aのこと大事にしてる感がすごい」
「あっそれわかるー!」
「だけど王子って、読めないよね。いまいち何考えてるかわかんないっていうか」
「あー」
「確かにAちゃんのこと、好きなのかな?って思えばあくまで後輩だからみたいな態度も取るし」
「俺もまだ付き合い浅いからわかんねえことのが多いよ、中島は」
「そうなんだー。あ、あれA…?」
「ん?」
大学から駅まではそう遠くない。駅前の広場には、先に走って行ったAの姿と、恐らくついこの間別れた元カレの姿が見えた。
「元カレ?!なんか腕掴まれてるし!」
「えっ、Aちゃん大丈夫かな?!」
「ごめん、俺ちょっと、」
行ってくるわ、とその場に向かおうと足を踏み出した瞬間、視界に入って来たのは、中島の姿。
「あ、王子…」
良かったのか悪かったのか、一足遅かったようだ。Aに取っては俺じゃなくて中島でよかったんだろうけど。
「…俺が行かなくてよかったみてーだわ」
「風磨くん…」
「えっなんかそんな哀れみの目で見んのやめてくんない2人とも」
かっこわりーだろ、と笑ってから2人に別れを告げて自分の家へと歩き出す。
中島じゃ、ダメだって。俺じゃなきゃ、ダメだって、Aは気付いていないだけなんだ。
隣に居なきゃならないのは、いつだって、俺だけだ。なあ、そうだろ?
『風磨が居なくなったら、私もう生きていけないかも』
Aが口癖のように言うその言葉を、何度も、何度も言い聞かせるように、頭の中で繰り返した。
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みゆ(プロフ) - ぷぅ∞さん» ぷぅさん初めまして!嬉しいお言葉ほんとにありがとうございます!これからも切なく甘くを目指して完結頑張るので応援おねがい致します! (2019年5月3日 19時) (レス) id: c270fe5c87 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ∞(プロフ) - 初めまして。いつも更新を楽しみにしています。風磨くんの切ない恋にきゅんきゅんしています。更新頑張ってください! (2019年4月30日 18時) (レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆ | 作成日時:2019年4月9日 22時