罵 ページ33
東京駅の中のカフェで珈琲を飲んで待てば、大きなスーツケースを持った潔子先輩が小走りにやって来た。
「で、進展は?」
「えぇ〜、可愛い後輩に第一声がそれです?」
「お久しぶりAちゃん。今日は見送り来てくれてありがとう。で、進展は?」
「ホンッと、素直ですよね!」
潔子先輩が期待するような展開は一切無かったと言えば嘘になるので、私は観念して洗いざらい話した。
そうすればやっぱり大きく目を見開き驚いた顔で私を見つめていた。
「Aちゃんってばかなの?何でその時に宮くん選ばなかったの」
「だって、信介をあのまま一人になんて」
「じゃあ宮くんはそのままでいいの?」
「いや、良くないんですけど」
「本当にAちゃんって馬鹿だよね。超が付くくらいあほ」
まさか潔子先輩に罵倒される日が来るとは思ってもいなかったが、正しい事しか言わないって分かっている人からの正論って、なんか胸が貫かれるっていうか、頭に響く。
北信介に清水潔子、それに元祖信介さんのおばあちゃん。割と宮侑も言うときは言う。
正論パンチ、ここ最近食らい過ぎて頭が痛い。
「結婚式は宮城で?」
「うん、まだまだ先なんだけどね。6月は混むから7月の上旬にしようかなって」
「呼んでくださいね、飛んできますから」
「その前に私はAちゃんの結婚式に行きたいんだけど。ねぇ、本当にどうするつもりなの?本当にこのまま上司の方と結婚するの?宮君はいいの?」
気づけばもうそろそろ送り出さねばならない時間で、椅子を立った時に潔子先輩は私の頭を撫でてこう言った。
「時間は待ってくれはしないけれど、宮君は待ってくれると思うわ。いつまでも」
いや、いつまでも私のぐずぐずに付き合ってくれる人なんていないだろって思いつつ、そうであって欲しいとも願う。あぁ、私ってなんて残酷なんだろうか。
幸せになるには誰かの幸せを踏み台にて、それは成り立つ。そう聞いたことがある。
今までそうとは思わなかったが、こうやって追いつめられると、幸せはミシン糸のように細く、簡単に手で千切れてしまうものだと知った。
そして言ったのだ。改札の前、振り返り、私を見つめて。
もうそろそろ良いんじゃないの、と......。
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狼 - 三角関係ってやつですねぇ…ヤバイですねぇいいですねぇ←(さいてi (2020年3月20日 21時) (レス) id: 58dc9d80b9 (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - ありがとうございます!!自分の中でもいかに北さんが喜ぶハッピーエンドというのが難題でした!最初から読んでいただけてるなんて、本当に光栄です。よろしければ少ないですが、小話と次作も読んでいただけると嬉しいです!! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 紫乃さん» ありがとうございます、めちゃくちゃうれしいです。当方本当に語彙がないので、国語辞書を片手に執筆したかいがありました! (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
本郷ゆい(プロフ) - 瑞稀さん» コメントありがとうございます。どうしてもここまで北さんについて深く掘り下げると、肩を持ちたくなりますよね!!小話では北さんに救われるよう書くので、楽しんでいただけたらと思います。 (2020年3月7日 23時) (レス) id: 36ee06747a (このIDを非表示/違反報告)
猫太郎丸 - 完結おめでとうございます!!!初投稿されたときからずっと見てた作品で毎回ムズきゅんされました…!侑くんも北さんも報われてほしくてでも作者さんの完結方法はとてもスッキリして今とても爽やかです!(?)改めまして本当におめでとうございます! (2020年3月7日 22時) (レス) id: 3db7769967 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:本郷ゆい | 作者ホームページ:http://nanos.jp/honngoyui/
作成日時:2019年11月11日 22時