【北信介】別の人の女になったで【宮侑】

華 ページ18

晩御飯という名のおつまみとビール片手に、北さんご対面。

「飲みすぎたら頭、痛なるで」

「今日はほどほどにしておきますって」






あれからデパート内を巡回した。各々、買いたい物が買えて満足しれ帰宅。

タピオカが予想以上に腹持ちが良く、外食するほど腹が空いている訳でもなかったため、こうして宅飲みとなった。

北さん曰く、「キャッサバ芋も立派な芋や」だそうだ。








生ハムと林檎のサラダとピリ辛お揚げさんをつまみながら、北さんと談笑。

今日購入した家具について、好きなおかず、よく食べてたアイスの話やら、気付けば盛り上がってしまい、しまいには恋話となってしまった。









「Aさんと初めて会ったのは、創立記念パーティーやったなぁ」

「私は覚えてないです」

「会食って疲れる思うてたら、気分悪そうな人がおって寄ったら、偉い人に飲まされたって言うけん、外連れだしたんよ」

「あ、ああああれ、北さんだったんですか!?」




慣れないハイヒールに、お偉いさんの接待。お偉いさんが代わる度に新しいグラスを渡されるため、相当な量を飲んでいた。

誰かがロビーのソファーで看病してくれた。中ではビンゴ大会も行われていたのにも関わらず、私に付きっきりになってしまい、申し訳なく思っていた。


社員証は大阪支店所属しか覚えていないし、人に聞くわけにはいかず。2年が過ぎようとしていた。

ようやく、あの時のお礼が言えた。









「パーティーって立って食うやん。あれ、行儀悪いねん」

「ふふ、北さんらしいですね」


同じペースで飲んでいたのに、北さんの方が酔いが回っていて。完全にできあがった北さんは、口が達者で、笑い上戸になっていた。

実に違和感。









本当の本当を言うと。
不安だった。必要最低限しか語らない北さんとの結婚。毎日一緒に居たら息が詰まって死んじゃいそう。

そう思っていたけど。

最近は北さんが喋り出す事が多くて、割りと叱られるけど、よく笑うよう。北さんが。


なんか、自分が思っていたより毎日が楽しくて、あの日以来、私は泣いていない。

と言っても、やはり我が家はここではないし、あの家に帰りたいし、立たないと起きた事にならない宮家が、私の居場所だと思う。



ここに居てもいいかなと思う半面、早く帰りたいと思う自分。

ここに居るのを拒めなくなっている自分が、なんとなく嫌だった。




そんな私の憂鬱なんぞ知らぬ、とでも言うような顔で笑う北さんに、少し腹が立った。

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