4 ページ14
田中side
一定のリズムで上下する胸に聴診器を当てて、一時期より断然良くなった音にひと安心。
おしゃべりはしないよって約束は、必死に?守ってるジェシーだけど、さっきから可愛い手が忙しそう。
「あ…。こーら、ジェシー!」
ぽろんと俺の耳から聴診器を取ったいたずらっ子の鼻をつまむ。
ジェ「んへへっ!はなひへー!」
「やーだね。いたずらさんのお鼻はこうしてやる〜。」
つまんだ鼻をぐいっと上に押すと、今度はぶーぶー言ってはしゃぐジェシー。
こんだけ元気なら、あとはリハビリ頑張って体力戻れば退院も早そうだななんて、頭の中でスケジュールを組み立てる。
まぁ、これはジェシーだけのスケジュールであって。俺らの心配は違う方向へ傾きかけていた。
A「あー!樹くんいじわるしてる!もう〜ジェシーがブタちゃんになってるじゃん!」
やめてー!なんて言いながら病室に入ってきたAは、定位置となったベッド横の椅子に座った。
ジェ「おかえりなさーい!ランチ、なんだった?」
A「えっとね、うどん!お腹いっぱい〜。」
そう言って撫でるお腹は、言葉と裏腹にぺちゃんこで、へらっと笑う顔は青白い。元気なジェシーも、おもわず昼寝に誘うくらい。
助けたい、守りたいって気持ちは分かるけど、自分の身体が後回しになる癖をなんとかしてあげたいんだよなぁ…。
.
ーおっ、と…。支えてるから、力抜け〜。はいはい、大丈夫だから。じっとしてなさいって…。
半分しか食べられなかった夜ご飯をごちそうさまして、立ち上がった途端に世界が真っ暗になった。
ぐるぐる回って、自分が立ってるのか座ってるのかも、どこを向いているのかもわからなくって。
ただただ、支えてくれる腕にしがみつくしかない。
「ほ、くぅ…ん゛ぅー…っ」
北斗「こらこら、目閉じてなさいって。ここにいるから。大丈夫、ね、大丈夫。」
なんだか無性にほくちゃんの笑顔が恋しくなったけど、見えたのはぐにゃりと回る世界だけ。
ぞわっと身体中を駆け回った嫌な感じが、一気に喉元まで駆け上がって、嫌だ…と思った時にはもう遅かった。
ぶわーっと口元に広がる感覚と、嫌な匂い。
北斗「ごめーん!バスタオル取って!A嘔吐!」
森本「はいよー!ん、Aこっちもらう。北斗シャワー行ってきな?」
北斗「あー、じゃあここ片してからにするわ。ありがと。」
ほくちゃん、ごめん。汚して、ごめん。
言葉にしたい思いは、音にならずに消えた。
1108人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅(プロフ) - 更新ありがとうございます!そして、感動をありがとうございます! (8月16日 19時) (レス) @page30 id: 7007161c36 (このIDを非表示/違反報告)
結夏(プロフ) - 更新ありがとうございます!!ほぼ毎日何度も何度も読み直しています!きなりさんのお話大好きです!応援してます! (8月16日 6時) (レス) @page30 id: 27b7b36f37 (このIDを非表示/違反報告)
遥(プロフ) - 数日前からまた1から読み返していたばかりだったので、新しく更新されていてとても驚きました!!すごく嬉しいです🥰これからも無理のない程度に楽しみながらお話をあげてくださると嬉しいです!応援しています🫶 (8月16日 1時) (レス) @page30 id: c72fa43d6e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望 - 更新されたこと、とても嬉しいです。ありがとうございます。きなりさんのペースで、また物語を紡いでくれたらと思います。 (8月15日 23時) (レス) @page30 id: 607ec5cd06 (このIDを非表示/違反報告)
雅(プロフ) - 色々大変でしたね💦更新ありがとうございます😌 (2022年9月26日 23時) (レス) @page20 id: 7007161c36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きなり | 作成日時:2022年6月20日 20時