壊れた十等星。

人魚姫の涙星 ページ9

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ふらふらとした足取りが後悔を告げる。




「あー……」




この頭の浮遊感はどうしようもならなくて、なんとか和らげようと思って声を出した。

早く彼の所へ行きたい。
これの感覚が消えるまで膝枕してもらおう。なんて。
水が鬱陶しく滴るのをタオルで拭き取って、リビングまで足を運ばせる。





いつものように規則正しい音を立てて開くドアは、私の居場所。
お風呂上がったよ。を形にする前に私は口を尖らせる。

私の存在を知った彼はやっちゃった。みたいな笑みを浮かべる。





「なんで触ってるの……」

「……調べ物してました」





調べ物なんてスマホで出来るじゃん。あー…Aには言い難いけどスマホのさ、GB到達しちゃった。え、嘘……、だからYahoo!開けなかったの？ うん、ごめん。




少しだけ駄弁っていると、あのふらふらは消えて無くなっていった。
あーあ、なんだ。
膝枕してもらおうと思ったのに。


諦めて彼の隣に座ると、タオルが宙に舞う。
右上を見上げると、





「髪乾いてない」

「うわ、やめっ……」






ぐしゃぐしゃと髪をタオルで拭かれて、もみくちゃにされてしまう。
それと同時に後ろに倒される私。
着地したのは彼の膝で、眼を開けると彼の顔と至近距離｡
舌舐めずりをして、私を視界に捕らえる。


この歳になってドキドキするなんて、ベタな発想をしてしまう私はまだあの頃から抜け出せないんだろう。




「ねぇ、」




どちらが発したかわからない声は、二人だけの部屋を埋め尽くす。





「ふたご座流星群、観に行こ」




有無を言わせないその眼からは、涙星が零れ落ちた。





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