彼と彼女の秘密の会合 ページ37
「無事退院して安心したよ」
某日、杯戸町にある喫茶店で1組の男女が向かい合って座っていた。男は肩にギリギリつくかつかないかの長さで、艶のある黒髪を僅かに左側へ重みを寄せている。女は男に苦笑いしながら謝罪の言葉を口にし、紅茶に手をつける。
「巻き込んですみませんでした。本当はこうやって会うのすら危ないはずなのに」
「俺がしたいことだから気にしなくて良いと言ったはずだよ。…君のご両親、特にお父さんにはお世話になったからね」
男も紅茶に手をつけ、B5サイズの封筒を差し出す。右下に小さな字でマル秘の印が押してある。女はそれを受け取り、中身を確認する。そこには、先日降谷から聞いた真相とほとんど同じことが記載されていたため、すぐに封を閉じてカバンに仕舞った。
「…驚かないのかな?」
「犯人を取り調べた友人から、ある程度のことは聞いていましたから」
「なるほど。…彼を匿ったヤツは、こちらで排除したから安心してほしい。まだ仲間がいるかもしれないけどね」
「充分です。これ以上、小田原さんの手を汚すようなことしたくないですから」
「…10年もやってきたことなのに、今更なにを。その友人にも同じことが言えるのか?」
思わず言葉に詰まれば、男__
父を亡くした10年前、父の部下だった彼は事件を個人的に調べていた。女__櫻樹が警察官になりたいと言った時、小田原は猛反対したのである。両親の事件については自分が調べるからと言うものの、父が残した母に関する資料があるからそれを譲ると条件を出せば、苦々しい顔で了承されたのが懐かしい。父に自分のことを頼まれたのだろう、何かと面倒を見てくれる故、兄であり父のように慕っている。しかし、昔と違って同じ警察官、所属は違えど先輩であり、そして世話になっている小田原には、どうしても逆らえなかった。
「…すいません、失言でした」
「いや?こちらも意地悪なことを言って悪かった。…時間だね、俺はそろそろ行くよ」
「あ、お代は私が」
「報酬代わり…だったね。それはもう終わりだ。ことは済んだのだから。君の活躍、楽しみにしているよ」
ロングコートを掴み、小田原は会計を済ませて店を出た。相変わらずスマートな仕草である。
・
櫻樹はのんびりと紅茶を飲み干し、本来の目的地__父が眠る墓へ足を進めた。
小田原長義__警視庁警務部人事第一課監察係、通称「ヒトイチ」所属
彼と彼女と再会の音→←Dear.Our friend:いつでも君のそばにいるよ
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涼夜(プロフ) - 休校さん» コメントありがとうございます。気に入っていただけて幸いです。今思えば、後ろから読んでも案外悪くないかもしれない…と自分で思っちゃいました笑 感想をありがとうございました。続編は7年前のお話なので、こちらもよろしくお願いします! (2020年6月29日 23時) (レス) id: b39a884821 (このIDを非表示/違反報告)
休校 - 面白くて、切なくて、哀しい物語でした………すごく気に入りました!遠回しな表現や伏線などを理解していくと奥が深いですね!最後は、赦しをこう相手がいて、よかったです!上から目線ですみません!すごく楽しかったです!ありがとうございます笑 (2020年6月29日 21時) (レス) id: 45889617ce (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 涼夜さん» 読みましたけど...まぁ、とりあえず泣いたのはいいとして(よくない)私は、泣ける小説も好きなので!何となく逆走ってところでひかかってはいたのである意味スッキリですw完結?おめでとうございます! (2020年6月27日 23時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
涼夜(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» コメントありがとうございます。想像していた展開とは真逆だったでしょうか?「作者から」に解説みたいなのを記載しました。望んでいた展開等ありましたら、コメントをしていただければ幸いです。 (2020年6月27日 22時) (レス) id: 5c254c67f7 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 全部...夢だったの...?え... (2020年6月27日 1時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼夜 | 作成日時:2020年6月20日 21時