友へ送る桜の贖罪ーアトーンメントー 【警察学校組】

Dear.Wataru.D：風がすっと通り抜けた ページ35

ビル街を出て、大通りでタクシーを拾って移動する。見慣れた景色に懐かしさが込み上げてくるが、目的地に着けばその想いはいつの間にか消えていた。



「こんにちは、伊達くん」



今更ながら、それなりに通る道であったこの場所で事故にあったんだと思う。1輪の百合と、友人＿＿伊達航がよく咥えていた爪楊枝を1本供え、数秒の黙祷をした後、静かに呟いた。



「3人のところへ行ってきたよ。伊達くんが最後」



1年前、刑事部に所属する友人から伊達の死を知らされて、目の前が真っ暗になった。今の年になって分かったのは、伊達と付き合っていた彼女も自ら命を絶ったという、悲しい真実。



「夢を見たの。君が巻き込まれた事故は、うちの松井くんが救ってくれて。萩原くんや降谷くんじゃないけど、彼のFDも無事に負傷しました、なんてね。それに、君がナタリーさんと結婚して、幸せに笑う君達を見ている私達がいる……そんな夢を。君は、いい男だったよ……。そうだ、諸伏くんのこと、教えてくれてありがとう。彼のお兄さんには……ちゃんと伝えたから」



溢れ出そうになる涙は、いつの間にか落ち着いていた。きっと移動中に気持ちの整理が既についていたからだろう。



「次は、君の命日の時に来るよ。前みたいには来られない。……見守っててよ。私は、私達は……私達の為に生きるからさ」



午後は彼と会う約束がある。それが済んだら、しばらく足を向けていなかった父の所へ報告に行くとしよう。背を向けて歩き出せば、どこからか声が聞こえた気がした。









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＿＿さよなら、櫻樹





＿＿「……さよなら、伊達くん。ナタリーさんと、幸せにね」





いつの間にか、1輪の百合と爪楊枝が消えていた。

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