友へ送る桜の贖罪ーアトーンメントー 【警察学校組】

Dear.Jinpei.M：忘れてはいけないと ページ33

同じく電車で移動し、次に訪れたのは杯戸ショッピングモール。優雅にゆっくりと回る観覧車の裏手に行き、その巨大な円を静かに見上げた。



「こんにちは、松田くん」



少しして視線を戻し、1輪の百合と、友人＿＿松田陣平が好んでいた銘柄の煙草のケースを供える。しゃがんで目を閉じ、数秒の黙祷をした後、静かに呟いた。



「さっきね、萩原くんのところに行ってきたんだ。松田くんにも、報告しようと思って」



喧嘩別れのようなことをしてから連絡を取る機会が減り、ずっと後悔をしていた。自分が認めた人物には誰よりも信頼をし、何かあれば誰よりも怒る、そんな性格が羨ましかった。



「まさか本当に萩原くんを追って逝くなんて、思わなかったな。でも、一般市民を守った君は、勇敢だったよ……。聞いて?この間不思議な夢を見たんだ。萩原くんが生きてて、君と共に市民を守って、君とご飯を食べに行って、君とお酒を飲んで、そして君と7年間過ごした……そんな夢。もし君が生きていたら、喧嘩別れしたこと、きちんと謝りたかったのに」



いつから涙腺が緩くなったのだろう。どうにか堪えることが出来たが、あと2つ行く場所があるのに、最後まで持つだろうか。無理矢理口角を上げ、別れを告げる。



「萩原くんにも言ったけど、次は、萩原くんと松田くんの命日の時に来るよ。前みたいには来られない。……見守っててよ。私は、私達は……私達の為に生きるからさ」



背を向けて、ゆっくりと視線を上にあげ、青い空を見つめる。静かに目を閉じると、優雅に回る観覧車の音と一緒に、どこからか声が聞こえた気がした。









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＿＿さよならだ、櫻樹





＿＿「……さよなら、松田くん」





いつの間にか、1輪の百合と煙草のケースが消えていた。

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