Dear.Kenji.H:なくす前から知ってたよ ページ32
喫茶ポアロで朝食を取った後、7年前に友人が殉職した場所へ電車で向かう。駅からは少し遠かったが、非番である今日、特に急ぐ理由もないため歩いた。
「こんにちは、萩原くん」
“売地”と書かれた場所に、1輪の百合と、友人__萩原研二が好んでいた銘柄の煙草のケースを供える。しゃがんで目を閉じ、数秒の黙祷をした後、静かに呟いた。
「髪、切ったんだ、伸ばした状態を保つ必要がなくなったから。昔みたいでしょ?」
前髪も伸ばし、肩甲骨を被せるぐらいの長さだった髪を切り、警察学校時代の長さに戻した。過去を断ち切る意味を込めて、散髪したのは正解だった。枷のように囚われていたこれまでの重みもない。
「君が勝手にいなくなったのは今でも許せない。友人を置いて1人先に逝くなんて、君は罪深い人だね……。けどね、この間不思議な夢を見たんだ。私が君を助けて、私も君も生きていて、君とご飯を食べに行って、君とお酒を飲んで、そして君と7年間過ごした……そんな夢。もし君が生きていたら、こんな風に過ごしたのかなって思ったよ」
胸にこみ上げてくる熱いものがあったが、まだ行くところが残っている。ここで泣くべきではない。それに、涙はあの時、充分流した。
「次は、君と松田くんの命日の時に来るよ。前みたいには来られない。……見守っててよ。私は、私達は……私達の為に生きるからさ」
背を向けて、次の場所へ行こうとすると、少し強い風が吹いた。思わず立ち止まって目を瞑ると、どこからか声が聞こえた気がした。
・
・
__さよなら、Aちゃん
「……さよなら、萩原くん」
いつの間にか、1輪の百合と煙草のケースが消えていた。
Dear.Jinpei.M:忘れてはいけないと→←僕である為
93人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
涼夜(プロフ) - 休校さん» コメントありがとうございます。気に入っていただけて幸いです。今思えば、後ろから読んでも案外悪くないかもしれない…と自分で思っちゃいました笑 感想をありがとうございました。続編は7年前のお話なので、こちらもよろしくお願いします! (2020年6月29日 23時) (レス) id: b39a884821 (このIDを非表示/違反報告)
休校 - 面白くて、切なくて、哀しい物語でした………すごく気に入りました!遠回しな表現や伏線などを理解していくと奥が深いですね!最後は、赦しをこう相手がいて、よかったです!上から目線ですみません!すごく楽しかったです!ありがとうございます笑 (2020年6月29日 21時) (レス) id: 45889617ce (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 涼夜さん» 読みましたけど...まぁ、とりあえず泣いたのはいいとして(よくない)私は、泣ける小説も好きなので!何となく逆走ってところでひかかってはいたのである意味スッキリですw完結?おめでとうございます! (2020年6月27日 23時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
涼夜(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» コメントありがとうございます。想像していた展開とは真逆だったでしょうか?「作者から」に解説みたいなのを記載しました。望んでいた展開等ありましたら、コメントをしていただければ幸いです。 (2020年6月27日 22時) (レス) id: 5c254c67f7 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 全部...夢だったの...?え... (2020年6月27日 1時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:涼夜 | 作成日時:2020年6月20日 21時