Rock you 6《y.yokoyama》

293 ページ47

＊



Aって、ほんまに…。



俺はきっと、一生Aには敵わんわ。



｢幸せにする｣って男のセリフやん。



なんやねん…。



なんやねん、もー…



なんで先に言うん？



あんなん聞かされて、俺はどうしたらええの？



完全に出ていくタイミング失ってもうたやんけ。



俺は少し離れた場所から、オカンと話をするAを見ていた。



あんな嬉しそうに笑って…。



Aはアホや。



俺なんて、なーんもしてやれてないのに。



我慢ばっかさして、色々気ぃ遣わして



それなのに、いつも俺だけをまっすぐ見てる。



俺のことだけを…考えてくれてる。



もっとワガママ言うてええのに…。



…あー、アホは俺やな。



こんなにも愛されてんのに、俺ばっかすきやって思ってた。



ほんまに、アホや。



俺は立ち止った場所から、Aに向かって歩き出した。



｢A｣



Aの背後に立って、名前を呼ぶ。



…アカン、俺、泣きそうや。



名前を呼ばれたAがゆっくり振り返ると、びっくりした顔になった。



｢…きみくん、どうしたの？｣



バッグからチェックのハンカチを出しながら、俺に近づいてくる。



｢…泣いてるの？｣



｢泣いてへん｣



｢でも、目と鼻が真っ赤だよ？｣



｢…花粉症や｣



俺はそう言うと、Aの腕を引いて抱きしめた。



俺の腕の中でAが焦ってる。



｢…ちょっと、きみくん…まずいよ。誰かに見られたら…｣



｢…ええから。ちょっとだけ…」



俺がそう言うたら、Aも諦めたんか俺の背中に腕を回して俺を抱きしめてくれた。

294→←292

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す