【カゲプロ】「目を逸らす」少女はメカクシ団に入りました。

16.10の能力 ページ17

「お前の能力がどんなものかは分かった。
それで……その能力の名前は覚えているか？」

「えっと……確か、目を逸らす能力だったと思います」

「目を逸らす……か。
マリーは聞いたことあるか？」

「ううん……あ！私、お部屋から
おばあちゃんの日記持ってくるね」

パタパタとかけていくマリーちゃんを見送る。

「あの、マリーちゃんのおばあちゃんって……？」

「それがさー、僕達の能力の生みの親らしいんだよねー」

頭の後ろで手を組んで、カノさんが言う。

「生みの親、ですか？」

「そ。Aちゃんは、メデューサって知ってる？」

「え？あ、はい」

メデューサといえば……ギリシャ神話や
童話にも出てくる、蛇の髪を持つ女の怪物だ。

「マリーのおばあちゃんの、アザミって人がそうだったみたい。
マリーはメデューサの子孫で
僕達はその能力を受け継いだ、ってことになるね」

……ちょっと追い付いていけない、かも。

「そのキッカケが、カゲロウデイズ……
俺達がずっと追いかけてる怪現象だ」

　

キドさんたちが言うには、それは
死に瀕した何人かの人間を飲み込んで
飲み込んだ対象に悪夢を見せるという。
飲み込まれた人間は悪夢の中をさまよい、
選ばれたかのように一人だけが外の世界に放り出される。
メデューサの能力を受け継いで。

キドさんは目を隠す。
セトさんは目を盗む。
カノさんは目を欺く。
マリーちゃんは目を合わせる。
モモちゃんは目を奪う。

彼らと一緒に飲み込まれた人達は
何の手掛かりもなく、未だ消息不明らしい。

　

「日記取ってきたよ！」

マリーちゃんがパタパタと駆け寄ってきた。

見ると、マリーちゃんの胸元に
古ぼけたノートが大事そうに抱えられている。

「……ずいぶん古いんだね」

『ご主人！私にも見えるようにして下さい！』

「分かってるって……」

皆で頭を寄せあって覗きこむ。

「えっと……ここに能力について
書いてあるんだけど……載ってないの」

記されている能力は全部で11個。
……逸らすという言葉は見つからない。
他に覚ます、醒ます、凝らす、かける、
冴えるは見つかるんだけど……

「たまたま書き忘れたとかじゃ……」

モモちゃんはそう呟いていたけど
私はそれどころじゃなかった。

「おい、これ……よく見たら
人間の文字で書かれてねえぞ……？！」

シンタローさんと同感だった。
もう訳が分からない……

「Aさんの能力は、
ちょっと特別なのかもしれないっすね」

皆が黙りこくっている間も、その言葉が引っ掛かっていた。

17.残りの二人→←15.居間にて

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