●線香花火(赤×白) ページ43
ちゃか×のえる
・omamemamen様リクエスト
・notリアル設定(兄:如恵留、弟:ちゃか)
・今回のお話は、全て如恵留さん視点で進みます。
チリンチリン、と涼やかな風鈴の音が鼓膜を揺らす。
夏でも田舎の空気は澄み切っていて、風が心地いい。目いっぱい空気を吸い込んだのと同時に、もう一度縁側の風鈴が軽やかに鳴った。
―ご、ごっ
後ろから聞こえた音で、ハッと我に返る。振り向くと、部屋のベッドに寝かされた弟が苦しそうに顎を上げていた。
如「海斗、苦しいね。ちょっと待ってね。」
さっきまで感じていた涼しさは幻みたいに消え去って、急に汗が噴き出す。俺は履いていたサンダルをほぼ脱ぎ捨てるようにして、縁側から部屋に上がった。
やっと使い慣れてきた痰の吸引器を、手早く準備する。吸引の瞬間、海斗は辛そうに顔をゆがめたけれど、すぐに穏やかな表情に戻った。
如「よしよし、がんばったね。」
軽く頭をなでると、海斗は1つゆったりとまばたきをして、そのまま両目を閉じてしまった。
如「…もう、また寝ちゃうの?」
冗談っぽくむくれてみても、ぴったりと閉じられてしまった目は開かない。今年で25歳になるっていうのに、弟の寝顔は小さい頃と同じようにかわいらしいままだ。
今年は俺も取れそうなんだ、夏季休暇。だからさ、兄ちゃん。今年は一緒に飲もうよ。
この幼い顔立ちで、この子はそう言ったのだ。電話だから表情はわからなかったけれど、声は弾んでいた。
嬉しかった。普段は遠く離れている弟と、久しぶりに会える。しかも、俺が連絡するとどちらかといえばうるさそうにしていた弟が、自分から誘ってくれるなんて。
夏が、待ち遠しかった。あの日、悪夢のような電話を受けるまでは。
『海斗が、事故にあった。』
震える父親の声を聞いたとき、俺は街灯がぎらつくビル街を歩いていた。
風のない、熱帯夜だった。
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おさと(プロフ) - る - るさん» る-る様、リクエストありがとうございます!またリクエストいただけたこと、いつもお読みいただけていること、本当に嬉しいです😭長くお待たせしてしまうかもしれませんが、しっかり書かせていただきます、! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
おさと(プロフ) - そらさん» そら様、コメントありがとうございます!またリクエストをいただけるなんて、本当に嬉しいです😭続編、書かせていただけるのが今から楽しみです!またまたお待たせしてしまいますが、気長にお待ちいただけますと幸いに存じます! (2022年8月27日 17時) (レス) id: ede36f8a86 (このIDを非表示/違反報告)
る - る(プロフ) - いつも本当に楽しく読ませて頂いています; ; リクエストなのですが、リアル設定で松倉くんが仕事に疲れ塞ぎ込んでしまっていってしまい段々と仕事にも来なくなりそこで全メンバーが松倉君を助けるお話が読みたいです。分かりにくくて申し訳ないです.... (2022年8月27日 13時) (レス) id: 6d6ceb074c (このIDを非表示/違反報告)
そら - →病気は悪くなるばかり。弱っていく青を見て桃は自信をなくす。そんな姿を見て白も昔を思い出し、桃だからできることがあると励ます。 (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
そら - たくさんリクエストある中恐縮ですが、またまたリクエストさせていただいてもよろしいですか。「夢のかたち」の続編で、研修医の桃さんが大きな病気と闘う青の担当に。頑張る青の姿を子どもの頃の自分と重ねてなんとか治してあげたいと奮闘するけど→ (2022年8月25日 20時) (レス) id: e020254286 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おさと | 作成日時:2022年8月10日 19時