S.tiger【病系短編集】11

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Side海人


龍「…ちゃか！」


大きな声に顔を上げると、真っ白なベッドに横になっている海斗がぼんやりと目を開けていた。２，３回ゆっくりとまばたきをした後、その目が急に泳ぎ出す。



元「おいおい、まだ寝てなきゃダメだって。」


何かにとりつかれたみたいに急に体を起こそうとした海斗を、すかさず元太が止める。海斗は何か言いたそうに口を動かしているけれど、声がかすれて上手く話せない。



如「ちゃか、撮影はとりあえず大丈夫だから。撮りためてる動画もたくさんあるし。」


如恵留くんがそう言うと、海斗は唇をかんで腕につながった点滴を見つめた。悔しそうな、悲しそうな表情に胸が苦しくなる。



海「……ごめん。俺の、せいだ。」


椅子から立ちがって、頭を下げる。閑也が背中をさすってくれたけれど、俺はその手を振り払ってしまった。




宮「…ち、がう。俺が、熱、かくしてた、からっ、」


やっと聞こえた海斗の声は、聞いたことがないくらいガサガサだった。驚いたようにしめが顔を上げる。


龍「うそ、熱？ごめん、俺最初隣にいたのに気づかなくて…、」

倉「それなら、俺も。もっと早く、ちゃかたちの手伝いに行けばよかった…。」


ごめん、と言って、クラまで頭を下げる。みんなが自分を責めて、病室の空気が絶望的に重たくなる。



そこに、椅子の転がる音が響いた。




元「あ〜、もう！ダメ！『ごめん』はなし！！」


転がった椅子にも構わず、元太はブンブン首を振りながら腕で大きなバツ印をつくった。




最年少が思いっきり開けた風穴から、どんよりとした空気が少しずつ抜けていく。いつの間にか、俺たちはすっかり気の抜けた表情でうなずき合っていた。



閑「…無事でよかったよ、ちゃか。」


閑也の声に、さっきより大きく頷く。海斗は大きく息を吸って、またガサガサの声を絞り出した。



宮「…あり、がとう。助けて、くれて。」


ほんの少しだけ海斗の頬に戻ってきてくれた、ピンク色。


その色を見て、ぎゅうぎゅうに締め付けられた胸の苦しさが緩んだような気がした。












「『ごめん』禁止令」fin.

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