・ ページ6
.
白と青の電飾が眩しい。結局北くんに押される形で自宅へ送って貰うことになってしまった。
私としてはやはり嬉しいという気持ちが強くて、表面上では諦める方へと傾いていた想いも 心の奥底ではまだゆらゆらと漂っているらしかった。
そんなことなど露知らず、北くんは鼻先を赤くして「今夜は冷えるなあ」とおじいちゃんみたいな呟きを零している。
『…男バレって今度全国なんだっけ』
「おん、春高やな。知っとったんか」
『だってあんなに全校の前で表彰されてたじゃん、すごいね 受験勉強もしてるのに』
「…全然凄くなんかあらへん、凄いんは俺の仲間やから」
『……北くんも凄いよ』
凄いよ、なんて簡素な言葉しか思い付かない自分が憎い。年相応の語彙力の無さが身に染みる。
実際北くんは強豪チームの主将を任されているわけだし、凄くないわけがない。
北くんの志望校は全国的にも有名な難関校だったはずだし、部活もあるはずなのにこんな時間まで予備校に通っているのだから。
『適当に進学先決めてふらふらしてる私より、ずっとずっと北くんは凄いんだよ』
「適当に決めたん、進学先」
『やりたいこととかなくて、でも親は大学に行けって言うから』
「適当はあかんな、自分のことやろ」
『……うん、そうなんだけど』
うーん、北くんってたまに傷口に塩塗ることあるよね。
「まあでも、俺もめちゃくちゃやりたい 言うようなことはないしな」と 白い息を吐きながら北くんは空を仰ぐ。
イルミネーションが煌めく通りはいつの間にか抜けていて、明るすぎた街では見えなかった星が点々と散らばっている。
「……ああ、でも。ひとつだけこうなったらええな 思うことはあるけど」
『そうなの?』
「おん、内田にもいずれ教えたるわ」
『なにそれ、今じゃないの?』
「今はあかん」
真顔で切り捨てた北くん。わざわざ気になるような言い方しなくてもいいのに、軽く睨めば ふふ、と真顔を崩して企むような表情を浮かべる北くんは狡い。
ああもう、こんなに長い間話したのは久しぶりかもしれない。話せば話すほど、北信介という男に縛りつけられていく感覚。
思わず『好きだ』という言葉が溢れそうになるのを堪えて、『卒業までには教えてね』と口角を吊り上げて笑ってみせた。
.
723人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はやみこ - 北さん…かっこいい!とても素敵なお話でした。 (2020年5月24日 12時) (レス) id: d7eec8a8e8 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - えええ、大耳くん???それは意味深だよぉぉ。君も素敵な男やなぁ。これぞ甘酸っぱいお話ですね。誰かの恋の裏には言い出せもしない失恋が隠れてるのかな何て勝手に想像してしまいました。 (2020年4月30日 23時) (レス) id: 8c1d6118a6 (このIDを非表示/違反報告)
氷水(プロフ) - うわあああ…たまたま見つけて読んでしまいましたが、とても素敵でした…素敵な北くんのお話をありがとう… (2020年3月26日 1時) (レス) id: b2d8d7cb3b (このIDを非表示/違反報告)
an20080321(プロフ) - もうさいっっっこうです!!素晴らしい作品ありがとうございました、、!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: ee660bdd63 (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ありすさん» ありすさんはじめまして、ありがとうございます...!!この作品で少しでも多くの方に北くんをもっと好きになって下さったら嬉しい限りです。コメントありがとうございました!! (2020年2月25日 22時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月埜 | 作成日時:2020年2月14日 22時