９つの零れた涙２ (ページ22)

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skm side.

― 翌日 ― 06:30

「おっはよーーー！！！」

リビングの扉を勢いよく開けるのとほぼ同時に、

大きな声で挨拶した。

「‥おはよ」

「佐久間うるさ…」

「おっはよー、さっくん！！」

各々挨拶を返してくれたけど、
同じテンションで返してくれるのは康二だけだよ…
良いやつ‥

「眠たい」と呟いた翔太は寝不足らしく不機嫌で、

だから涼太からの視線が痛い。

…照とは昨夜のことがあって目を合わせづらい。

あとはー、とリビングを見渡すと

「あー！！あべちゃん！おはよ！」

椅子に座る親友に気づけば、ガバっと抱きつく。

にひひ、と笑みを浮かべてあべちゃんを見つめると、

「……。おはよう、佐久間。」

ワンテンポ遅い返事、いつもより低い声のトーン。

あべちゃんはチラッと俺を見れば目を逸した。

そして、いつもと同じように引き剥がされた。

…この違和感は何？

目を逸したあべちゃんの視線は

俺がプレゼントした手元のマグカップに向けられた。

あべちゃんは、何かを言いかけて口を閉じた。

「ね、あのさ、あべちゃん」

俺がどうしたのかと問いかけようとした時、

「佐久間ー、仕事に行かなくていいの？」

それを遮るかのように、翔太に声をかけられた。
それだけ言うとまた机に突っ伏した。

壁掛け時計をみれば時計の針は自分で思っていたより、
はやく進んでいた。

遅刻、ほぼ確定。最悪、だ。

これからおきることが容易に想像がついて、
恐怖で背中に嫌な汗をかいた。

あべちゃんの様子がちょっと気になったけど、
今は時間がないし、また後で聞けばいいと思った。

「…やっば、涼太ごめん！！ご飯食べる時間ない！」

そんな俺に涼太は「お昼にお腹すくでしょ」と

大きめのおにぎりを２つ持たせてくれた。

「行ってきまーす！！！」

おにぎりをカバンに入れて、そのカバンを背負い、

急いで靴を履けば飛び出すように家を出た。