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なんとかその日の撮影を終え、久しぶりに綾香と飲みにきた。
またなんか言われると嫌だから個室居酒屋。
玉森裕太のことなんか気にする必要ないのに。
お店に着いてしばらくは他愛もない話をしていたけど、ちょっとお酒が入って気持ち良くなってきた頃に
「玉森裕太とどうなの？」
と聞いてくる綾香。
「どうって…なにもないよ。」
「何もないわけないでしょ！
ピアス帰ってきてんじゃん！」
わたしの耳を指差してニヤッと笑う。
「それはちゃんと返してもらったよ。」
「ふーん、最近は？仕事一緒にしててどうなの？」
綾香の質問攻めが続く。
頼んだハイボールが届けられ、くいっと飲んでから
「特に何もないよ。」
といつもの冷静なわたしを装う。
元は冷静で感情的じゃないはずのわたしなのに…
最近は玉森裕太と一緒に居る時間が増えたせいで、感情が溢れてしまう。
久しぶりに会う綾香に変に勘付かれないようにしなきゃ。
「だってさ、寝た相手でしょ？
変に意識しないの？笑」
相変わらずちょっぴり下品な綾香に思わず笑みが溢れる笑
「仕事中はちゃんと切り替えられるから！笑」
嘘嘘、本当は全然切り替えられなくて今日も撮影止めちゃったくせにね。
わたしってばいつもの自分じゃないみたいだ。
「ふーん、でも玉森裕太はAのこと好きになっちゃったりとかないのかな？」
「そ、そんなのないない！
だってロクでもない遊び人でしょ？ないよ笑」
こういう時鋭い綾香は
「怪しい…それともAが好きになっちゃったとか？」
なんて言う。
思わず手にしていたお箸を落としてしまった。
「ははーん、いつも冷静なAとは思えないもん笑
図星なんだ！笑」
綾香の顔を見たらもうこれ以上嘘はついていられなくて…
こくんと頷いた。
「はーーー！やっぱり！
まじか〜大丈夫なの？傷付かない？」
「…傷付かないと言えば嘘になるかな」
初めて人に話す本音。
「やめとけって言ったのに…
でも言われてもやめられないよね、好きになるってそういうもんだから。」
綾香が優しい言葉なんてかけるから
また涙が出てしまう。
やめとけって言われて、
好きになんかならないって言ったのに、
本当に好きになって振り回されて傷付いて。
わたしは大馬鹿者だ。
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作者名：えむたま | 作成日時：2020年5月26日 2時
